■今月発行の「北海道経済」10月号にて、詩誌『フラジャイル』第3号、大きくご紹介を戴いております、誠にありがとうございます。
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■《詩のマチ旭川の再興へ》 大家、吉増剛造氏も登場
~「詩のマチ旭川の再興に向かって」――。そんなキャッチフレーズに、歩みを進める旭川市の詩誌『フラジャイル』が、この8月に第3号を発刊、日本の現代詩をリードする吉増剛造、道立文学館長の工藤正廣、小樽商大名誉教授の高橋純3氏の鼎談をはじめとし、充実した内容になっている。(文中敬称略)
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花粉
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九〇歳のおじさんと八〇歳のおばさん
のために毎朝五時起きで除雪した 重い
雪をうちの敷地へ汗だくになって運ぶ
細かいところはおばさんが丁寧に除雪し
た 九〇歳のおじさんの具合が相当悪く
なり施設へ入った 家は僕の紹介する不
動産屋に任せてくれた なかなか売れず
に困っても (お兄ちゃんが除雪を頑張
ってくれたから…) おじさんは他を頼
まなかった ようやく話がついたとき
おじさんは亡くなっていた 解体業者が
やってきて おじさんとおばさんが何十
年も暮らした家は三、四日で跡形もなく
消えた 庭も木もどこにもない 空白の
角の更地 半年もしないうちに 背の高
い雑草だらけになってしまった 雑草の
種はご近所に飛ぶ 除雪の日々を思い出
し 草を刈ろうと踏みこんだ 見たこと
もない何種類もの花の周りを 蜂や蝶や
もっと小さな虫たちが舞う 町内のオア
シス おじさんとおばさんはよく近所の
子どもたちをあの家で遊ばせてくれた
冬の間は自転車を物置に入れてくれた
草を刈ることも枯らすこともしてはなら
ないと思い 背を向けたとたん 九〇坪
の雑草の茂みにひそんでいた雀の群れが
一清掃射のごとく空へ飛びだしていっ
た いつの間に吸いこまれたのか あん
なにたくさん 星空に飛びだしていった
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2018-09-18.
■今月発行の「メディアあさひかわ」10月号にて、大きく取り上げて戴いております。誠に、ありがとうございます。
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《 新詩誌「フラジャイル」第3号発行
吉増剛造『火ノ刺繍』めぐる鼎談を紹介 》
「 対応 」 柴田望
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若い事務員
お客様のお叱りを受ける
あるサービスをどうしても無料でやれと凄む
「当社の決まりで有料になります」
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その客は発狂し、何時間も事務所に電話をかけまくり
スタッフ全員に「アイツは無料には出来ないと言った、
オマエも言うか? 言わないだろう」
「オマエたちの会社で、アイツだけが悪い」
魂の脅迫は続く…
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最初に電話に出た若い事務員だけが《悪い人》
タオルを持って謝罪に出向く
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「会社にとっては、たった一人、あなただけが《良い人》
あなただけが会社の利益を守ろうとした」
笑顔で褒めてくださった
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人を信じず 神を信じたこともない私に
生きる意味を与えてくれた
あなたの部下であることだけを喜びとして暮らした
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いつの日か恩返しをするとわかっていた
そのやり方が
あなたにとってたった一人
私だけが《悪い人》にならざるをえないとしても
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人に気を遣わせる生き方なんて自慢にならないと教えてくれた
くだらない山の天気が荒れても
頂上は静かで
あなたのふるまいのように厳かだ
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嘘は決してついてはならないと教えてくれた
その日から私は一度も嘘をついたことはない
伝え方は様々でも必ずあなたに真実を伝えた
私の目をまっすぐに見ることのできる人は少ない
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あなたの教えを全うする
命がけの覚悟だから
職を失おうが、名誉を失おうが
そんな世俗のことはどうだっていい
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魂の感謝だから
二度と再びあなたの目を見ることができなくても
いつも見守ってくれたあなたの目は
一生焼きついています
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裏切りに満ちた社会で
たった一人の《良い人》なら
あなたから学んだことをすべて注いで
たった一人の《悪い人》になってしまうことを恐れず
真実を伝えるべきだ
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それができない連中は甘えているだけだ
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あなたの教えを忠実に守る
それだけを思想に生きてきた
私利私欲のためにすることは仕事ではないと教えてくれた
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「やるべきことをします」と私は言った
「どうぞどうぞ」とあなたは言った
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抜け殻に命を与えてくれたあなたの信念のために
最大限の感謝をこめて
迷わず対応します
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2018-09-12.
■9月2日(日)、日本最古の鰊番屋である白鳥番屋にて行われました朗読会に参加させて戴きました。あれから1週間、世界がすっかり変わってしまい、1週間しか経っていないことが不思議です。たった4日後の朝に大地が揺れるなんて誰も思いもしなかった、海が美しい1日でありました。私たちフラジャイル旭川勢は朝5時に出発、8時には小樽に入り、番屋にて大変おいしい朝御飯を戴きました。(リハーサルのできる時間は、ありませんでしたので、やはり前日から入らなければなりませんね…^^。)
皆様にご挨拶をしながら、会場設営のお手伝い、駐車場誘導など、させて戴きながら、あっという間に50人くらい?お客様はどんどん入ってこられ、午前9時30分スタ―ト。
作・演出 支倉隆子さんの詩劇「ピングリーン人、アフリカに渡る」 福田知子さん、木田澄子さん、渡会やよひさん、藤山道子さん、支倉房子さん、川瀬祐之さんによる上演。ピングリーン人とは、ピンク+グリーン。荷札集配人であり、荷札そのものであり、妖精でもあり、果てしなく増殖を企んでいる不思議な存在…。休憩をはさみ、長屋のり子さんの進行により、ポエーマンズの皆様が登場。支倉房子さん、福田知子さんによる朗読。柴田がシンセサイザー演奏ということで、次の動画上映と演奏をさせて戴きました。木田澄子さんに声で御参加を戴きましたが、一曲目は音のバランスがなかなか難しく、やはりリハーサル必要ですね、誠に申し訳ございませんm(_ _)m
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■古い夏/小樽 「支倉隆子」
■アマリリス 「支倉隆子」
■また、支倉隆子さんの御詩集『身空x』(2002)より、「夜の草」の朗読を木田澄子さん、「犀」の朗読を渡辺宗子さん。そのときのピアノ演奏を柴田のほうでさせて戴き、朗読されるお二人の息づかいも聞こえるほどの小さい音で、声と息を聴きながら即興演奏、たいへん勉強になりました。進行表が手元にない状態だったのですが、長屋さんの司会進行で安心のもと、木田澄子さん、渡会やよひさんによる詩朗読。羽鳥☆NORIKOさんによる素晴らしいパフォーマンス、口笛と声、太鼓、音が一体化された舞踏とともに描かれていく。阿部嘉昭さんによる詩とお話。朗読の問題について、和歌の時代は詩と声は分離していなかった。芭蕉の俳句の時代から書いたものを確認できるようになり、声と詩の分離ははじまった? 俳句は朗唱に向かない。短歌は一首二回繰り返す。詩は朗読に向いている一定の長さの中で声が響く。エリック・ドルフィー「LAST DATE」に記された「音楽は一度空中に放たれたら、二度と取り戻すことはできない」二度と取り戻すことができない音の瞬間、一旦耳に入ったら消えてしまう…。支倉隆子さんの第三詩集『琴座』(1978)より「藤棚」。藤棚はこの世の何処にあるのか…「彼女は美しい湯気になる/二重奏も聴こえてくるかもしれない」。(阿部嘉昭さんの、響文社から出される御詩集、楽しみです!)
さらに支倉隆子さんの妹さんでソプラノ歌手の藤山道子さんによる独唱。恐れ多くも柴田が一曲目の「少年時代」と三曲目の「アメイジングプレイス」で伴奏をさせて戴き、楽譜初見で、コードしか弾けませんが。歌がとてもお上手で、間近で聴かせて戴き、感動しておりました。その後サプライズということで…先日横浜詩人会でラップを披露し大うけだったという苫小牧の福士文浩さんによる自作詩「眩しくて」のラップ披露(柴田がリズムマシンとピアノ即興伴奏)。嵩文彦さん、長屋のり子さんの詩朗読でいったん閉会となりました。
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■50名以上ものお客様がお帰りになられた後、主催者、出演者の皆様によるパーティ、朗読も行われました。山本さん、渡会さん、福田さん、阿部さんともピアノにて朗読セッションをさせて戴きましたこと、皆様から詩に関する貴重なお話をたくさん戴き、とても勉強になりました。なかなかイベント続きで大変でしょうと渡辺さんにお声掛けを戴いたり、木田さんより、色んな先輩たちのお話を聞くことも大切ですが聞き過ぎず、大切なことは自分で考えて決断していくこと、渡会さんより、詩作品を書くことを《一番の》優先にすること、たくさんの励ましのお言葉を胸に。木暮純もいい朗読をしました。名残惜しい皆様のお見送り。またお会いしましょうと感謝の気持ちでいっぱいでありまして、フラジャイルチームは海辺を観光、堺町のポセイ丼で海鮮丼を戴いたり、北一硝子を見学したりと、しっかり観光客として、良い時間を過ごしました。あの美しい硝子たちは地震で割れてしまったのでしょうか。その時、どんな音楽が空中に放たれたのか。「音楽は一度空中に放たれたら、二度と取り戻すことはできない」 二度と取り戻すことができないからこそ、新しい音を放出するための空中のキャンバスは白い。
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丸一週間後、旭川にて、長屋さんより元気なお声のお電話を戴きひと安心、ありがとうございます。2018-09-09.
■北海道の詩人の方々なら、誰もが拝見致しております、
詩人・村田譲さん(北海道詩人協会会長)のブログにて、
詩誌『青芽反射鏡』no.1も、ご紹介戴いておりました!
誠に、ありがとうございます。
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■空中庭園な日々
「空への軌跡」別館 ―― 北海道の詩誌を中心に & 気になるニュース
http://blog.livedoor.jp/gliding_flight/archives/2075081.html
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91歳の富田正一さんがお一人で、パソコンではなくワープロで編集された、
詩誌『青芽』終刊に対して全国から寄せられた反響が収められた、
声の集大成です!!!
『青芽からフラジャイルへ』展示と朗読会のチラシも
この『青芽反射鏡』郵送のときに同封して戴いて、
誠に、ありがとうございました。
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富田さんの小詩集も入っていて・・・
いちばん最後の作品、「直感」は鋭い!
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「直感」 富田正一
親友と思って
気軽にかけた電話だが
「いま お客さんでね!」
あの声の背には
誰もいない!
接客で鍛えた
直感だ
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を読み、一人で大爆笑をしてしまいました。
何を書いてるんですか、富田さん、
「気を付けろよ!」みたいな、教訓ですね。
わかりました。気を付けます(笑)!!
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富田さんの詩の活動の歴史は、国鉄所長時代、国鉄営業マン時代、広告会社時代…旺盛な実務の御活躍が織りこまれた、壮大なるタペストリー。
尽きることのないユーモアに、溢れます。