詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「特集・旭川の詩人たち~新しい地平・新しい様相~」 第2回 詩人 木暮純さん 旭川中央図書館(旭川市常磐公園)2階の資料調査室カウンター前のコーナーに☆

■「特集・旭川の詩人たち~新しい地平・新しい様相~」
  第2回 詩人 木暮純さん
旭川中央図書館(旭川市常磐公園)2階の資料調査室カウンター前のコーナーに、特集展示が行われています☆
・労働者文学賞2020〈詩部門〉佳作詩篇「回るラインと観覧車」(木暮純)や、詩誌「フラジャイル」、「ぺたぬぅ」、「詩めーる旭川」、「小樽詩話会」等の掲載作、小熊秀雄について寄稿の「美術の窓」、木暮純さんの活躍が掲載の新聞記事等、資料を閲覧できます。
旭川中央図書館にお立ち寄りの際はぜひ御覧ください!!

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■5月4日(火)の日本経済新聞に、劇作家の「清水邦夫さんを悼む」 旭川の詩人、松島東洋さんのこと 清水邦夫氏が旭川東鷹栖を訪れた「安部公房文学紀行~消されていく旅」

■2021年5月4日(火)の日本経済新聞に、劇作家の「清水邦夫さんを悼む」。「夢と挫折描いた演劇詩人」4月15日、84歳で亡くなられたとのこと。
 「1976年に妻の松本典子山崎努と結成した演劇企画集団「木冬社(もくとうしゃ)」の「「木冬」とは北海道の詩人グループの名から採ったもので、冬直前の季節をいう造語だ。夢を売る人の言葉は水で語られるといった詩(松島東洋)に触発されていた。」、
 ここに旭川の詩人、松島東洋さんのお名前が!!
 戯曲「火のようにさみしい姉がいて」のタイトルも松島東洋さんの詩篇「水と水」から採られていました。
 東鷹栖安部公房の会で2017年1月28日に安部公房「デンドロカカリヤ」の朗読会(東鷹栖公民館)を行った際、清水邦夫氏によって昭和40年代に書かれた「安部公房文学紀行~消されていく旅」を朗読しました。
 学研の文学全集『現代日本の文学47 安部公房大江健三郎集』(昭和45年発行)に清水邦夫氏が「安部公房文学紀行~消されていく旅」というエッセイが掲載されており、なんと50年前の旭川市東鷹栖の写真(カラー・モノクロ)がふんだんに収められています。実際に清水氏が当時の冬の旭川市鷹栖町(当時)を訪れ、《雪眼》を体験、そこから次のような推測が展開します。「〈雪眼〉があるなら、〈砂眼〉というようなものがあったのではないか。」まぶたの裏に砂がくいこんだときに見えた世界から、作家のイメージが広がったのではないか?「たとえば人間がデンドロカカリヤという植物に変身していくさまとか・・・」

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■詩誌『フラジャイル』第 11号を発行しました!!

■詩誌『フラジャイル』第 11号
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日頃より小誌活動への御理解、御協力を賜り心より感謝申し上げます。
おかげ様をもちまして詩誌「フラジャイル」第11号を発行することができました。
詩作品のゲストに中筋智絵さん、遠藤ヒツジさん!!
また、特別な御寄稿を、花崎皋平さん、岡和田晃さん、長屋のり子さん、金石稔さんからも戴き、忘れられない一冊となりました。
幅広い世代が参加致しております各同人による作品も多様な深みを帯び、充実致しております。
既に謹呈分の発送を開始、5月上旬には旭川市内の書店などにも納品されます(利益目的ではありませんので各書店1~2冊の納品、売上は市民団体名口座へ経費補填とさせて戴きます)。活動としては謹呈中心のため、もしご興味お有りの方がいらっしゃいましたら、御連絡戴けましたらお贈りする準備をさせて戴きます。ぜひ多くの方にお読み戴けましたら幸いです。
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詩誌「フラジャイル」第11号 目次 2021年5月
2 森の墓標  中筋智絵
4 続「生きる場の思想と詩」日々 その4 二〇〇七年から
               花崎皋平
31 現代北海道文学研究(一)
  理論的な枠組みの提示、一九六八年前後の検証  岡和田晃
36 加島祥造と私 そのⅡ  長屋のり子
40 今日 あなたの日に  林高辞
42 タフなファイトで  二宮清隆
44 トッピンシャーン  佐波ルイ
46 詩と私  荻野久子
48 本と映像の日々30  山内真名
50 ハルグモを刺す  木内ゆか
52 やまぼうし  福士文浩
54 きょうの気温は、へいきんきおん  小篠真琴
56 ■共作の試み  小篠真琴/鵜野しのぶ
58 なりわい・小啄木鳥の朝  鵜野しのぶ
60 フラジャイル同人近況 ☆ catch up 2021
62 芸術教室・ひとりぼっちの旅  佐々木虎力
64 うそんこ こん ほんとだもん ~おっぱい色の街  菅原未榮
66 退化論  松本莉鼓
68 種  日陰野もやし
70 羽(う)のすまい  冬木美智子
72 騙し騙され味わい深く  川嶋侑希
74 空煎り  金井裕美子
76 壁 (エキストラ)  柴田望
78 ちょっとした!  木暮純
80 チェロの復活  星まゆみ
83 星まゆみ 詩集『ひだまり』  二宮清隆
   ~いとしきものへの限りない思慕を星が降るように
84 パラパラ詩の全貌  金石稔
   ~阿部嘉昭詩集『かけら世の』(2021年3月、響文社刊)
88 村田譲『本日のヘクトパスカル』(竹林館)  柴田望
90 追悼・渡辺宗子さんの聲  柴田望
91 受贈図書御礼
92 感謝  柴田望
92 すべてあらゆる舞台への歓喜(柴田望「感謝」への返詩) 遠藤ヒツジ
94 旭川歴史市民劇に参加して  木暮純
95 短信
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旭川の詩誌「フラジャイル」第11号を発行致します。
 日頃より詩誌「フラジャイル」の活動への御理解を賜り心より感謝申し上げます。
 令和3年4月7日(水)、旭川の詩人、富田正一さん(94歳)が御逝去されました。
 富田正一さんは小熊秀雄と最も親しい詩友であった小池栄寿に師事し、戦後、名寄、旭川の文化振興に貢献され、下村保太郎の後継者として旭川詩人クラブの会長を長年務められました。道内最長の戦後72年間、詩誌「青芽」を発行されました。
 「青芽」の歴史は日本現代詩人会、日本詩人クラブよりも長く、北海道名寄にはじまり旭川大雪山系を中心に北海道内のみならず全国1500人以上の詩人が関り、多くの読者を持ち、一つの詩誌という枠を大きく超えた文化の絆を築きました。
 九州大刀洗飛行場、加世田市万世飛行場で、18歳の富田正一さんは通信兵として、死地へ赴く大勢の仲間(特攻隊員)を見送らなければなりませんでした。敗戦後、「これからは心の自由の時代だ」と詩誌を立ち上げ、19歳から91歳までの72年間、「心の拠り所」を守るために戦われました。71年目に、次の世代へ引き継ごうとお考えになられ、後継誌を創刊しなさいと私たちに託されました。沢山の貴重な御指導をくださいました。
 富田正一さんがいなければ、小誌「フラジャイル」はここに存在致しておりません。
 戦後76年の現代における課題、犯罪に発展するほどのいじめや小中高生の自殺者数は年々増えており、心の失われた痛ましい事件も多く、「心の拠り所」は奪われるものとしてあり、詩や芸術に届く感性や想像力を養う機会は、人類から失われつつあります。
 全力で、あの太陽のような笑顔で、詩人を励まし、導かれた。声なき声、言葉にならない言葉を、表現の自由と平和の場を築き、守ることに情熱を傾け、全力で誰かを応援する優しさを教えてくださった富田正一さんについて、小誌「フラジャイル」の次号12号(9月発行予定)と13号(12月発行予定)にて、特集のページを組ませて戴きたく存じます。
 ぜひ皆様の中で、富田正一さんについて御記憶されていることや、追悼の御言葉を小誌へ寄せて戴ける方がいらっしゃいましたら、どうか下記まで御連絡を賜りましたら幸いです。富田さんがお好きでした寄せ書きのようなかたちで、掲載をさせて戴きたく存じます。
 富田正一さんにお喜び戴けますよう、「心の拠り所」の創造を責務と心得、旭川の詩文化の発展を目指し、先達の偉業を次世代へ伝えることができますよう、精進致して参ります。今後とも御指導御鞭撻の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
2021年5月
詩誌「フラジャイル」代表 柴田望
tao81nozomushibata@gmail.com

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■星まゆみさん第三詩集を発行! 『ひだまり』(フラジャイル)

■描写力の確かさ、スケッチの見事さは、「ひだまり」「燻る音」「モルヒネ」における亡き父への限りない思慕の中にあるが、そこにはセピア色の写真を思わせる哀切さが滲んでいる。父に対してばかりでなく、いとしきものへの限りない思慕をまさに星が降るように、胸に染みる詩の輝きを私達は受け取るだろう。                  
(二宮清隆)
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■星まゆみさん第三詩集を発行!
『ひだまり』(フラジャイル)
 苫小牧の詩人、星まゆみさんの第三詩集『ひだまり』をフラジャイル叢書として2021年5月14日に発行します。謹呈分は既に発送を開始、5月上旬頃より旭川市内書店などでも販売されます。ここ数年、「フラジャイル」や「饗宴」などに掲載された星まゆみさんの詩作品三十五編が、三部構成の一冊に結実しました(編集は二宮清隆さんと柴田が担当、校正は木暮純さん)。「いとしきものへの限りない思慕をまさに星が降るように、胸に染みる詩の輝きを私達は受け取るだろう。」(二宮清隆さんによる帯文より)。
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詩 集  『ひだまり』
著 者   星まゆみ
二〇二一年五月十四日 発行
発行者   柴田望
発行所   フラジャイル党
編 集  二宮清隆 柴田望
校 正  木暮純
表紙(焼き絵) 「 絆 」
       作・星まゆみ

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■「壁 ―一枚の葉」柴田望・『グラフ旭川』2021年5月号《文芸》(53ページ)

■『グラフ旭川』2021年5月号《文芸》(53ページ)
「壁 ―一枚の葉」   柴田望
*

宮本武蔵は生涯に六〇回以上
命がけの勝負をして一度も敗れなかった
しかし沢庵和尚に騙されて
千年杉に吊るされた
怒って杉を揺らすが、沢庵が笑う

「お前の怒りはその程度、
 《私利私欲》のものだ
 本物の怒りはそんなもんじゃない
 大地を揺らす
 《世のため人のため》の怒りだ」

「虎は所詮動物、蛮勇は勇気ではない
 武士の強さはそんなもんじゃない」

死を恐れなかった武蔵が初めて
生きたいと願い、命乞いする
沢庵和尚は許さない

剣禅一如の境地を説いた沢庵宗彭
宮本武蔵と会った史実はない
それなのに千年杉のエピソードは
繰り返し語られている

一枚の葉にとらわれるのをやめたとき
百千の葉を心は見る
自分のために怒っていては
周りの怒りが見えない
だから人を守れない 
自分さえ守れないと悟る

怒りを手放したとき
沢庵がわざと目をはなした隙に
お通が武蔵を解き放つ
もう武蔵は虎ではない

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■2021年4月27日付の『あさひかわ新聞』にて「ともに旭川市文化功労賞受賞の詩人 富田正一さん(詩誌「青芽」「青芽反射鏡」主宰)と佐藤比左良さん(詩人ちひろなおみ・詩集『灯台』で第4回小熊秀雄賞準賞。今野大力の研究者)相次いで亡くなる」

■2021年4月27日付の『あさひかわ新聞』にて「ともに旭川市文化功労賞受賞の詩人 富田正一さん(詩誌「青芽」「青芽反射鏡」主宰)と佐藤比左良さん(詩人ちひろなおみ・詩集『灯台』で第4回小熊秀雄賞準賞。今野大力の研究者)相次いで亡くなる」記事が大きく掲載されています。
 「富田さんは九十四歳、佐藤さんは九十一歳。二人とも二十歳前後から詩の世界に身を投じ、約七十年の歳月を詩とともに歩んできた。二人の死を悼む関係者は多い。」
 詩誌「フラジャイル」創刊当時(2017年12月)の富田さん、木暮純さん、柴田の三人の写真を掲載戴いております。
・「戦争に負け、これからの日本はどうなるか。私は駅の雑踏の中で、人々の流れをただ見つめていました。そんな時、学校の担任が詩をやっていたことを思い出し、私も詩をやってみようと、級友らに呼びかけた。あっと言う間に四十人が集まった。」(富田正一)
・「詩の合評会では適切な言葉で分かりやすく、優しく、アドバイスをいただきました。作詩以外でも、特に年下の人には色々と配慮をして下さり、励ましてくれました。私にとってもなくてはならない存在でした。」(沓澤章俊(木暮純))
・「詩人であると同時に、表現の場を守る人でした。表現者が自由に書ける場を守る強い意志は戦争体験からくるものと思っています。その志を受け継ぎ、次の世代につなげていきたい」(柴田望)

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■「 領域 」   柴田望

「 領域 」   柴田望
*
 
報道と市の認識に「隔たりがある」
隔たりが招いたのか
調査する側の都合で変わるのか
 
教科書が笑う
当時の航海技術では捕虜を運べません
シベリアに抑留なんてありえない
 
いじめか、いじめではないか
シャベレルカ、シャベレナイカ
 
加害者の中から生まれたのか
どちら側かを決めるのは力か
 
教科書から消したのだ
黒珊瑚と呼ばれた詩人が
少女の心に寄り添い書いた記事を ※
 
九州大刀洗飛行場、加世田市万世飛行場で
死地へ赴く仲間を見送った
十八歳で復員、これからは心の時代だ
「拠り所」を築くために
十九歳から九十一歳までの七十二年間
声なき声 
言葉にならない言葉
表現の自由に生涯を賭けた
少年兵のいくさは終わりましたか
 
続きますか
領域が当然のごとく
奪われるものとしてある限り
*
 
※黒珊瑚(小熊秀雄)署名記事「北都高女生山田愛子が投身自殺するまで」(『旭川新聞』大正十二年)

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