詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

詩誌『青芽』終刊同人会友お別れ会~「青芽」を支えてくれた皆さんありがとう~(主催・詩誌『青芽』終刊運営実行委員会)


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■2018年6月17日(日)13:30より、アートホテル旭川2階パンジーにて、
詩誌『青芽』終刊同人会友お別れ会~「青芽」を支えてくれた皆さんありがとう~が行われました。(主催・詩誌『青芽』終刊運営実行委員会)
旭川市を中心に道内・道外より同人・会友が集い、『青芽』終刊を…残念な気持ちで見送るのではなく、これを境に新たな一歩を踏みだす同人・会友、そして『青芽』の存在を祝福する、笑顔いっぱいの会となりました。
既に年明けより運営委員会が結成され、準備を行って参りましたが、主宰の富田さんが細かいところまで入念に計画され、様々な準備を率先し、推進されました。本当に大変だったことと思われます。ありがとうございます。
 

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■アートホテル旭川2階の会場に、12時半くらいから皆さんが集まり始め、懐かしい再会の数々。13時半より開始。今は亡き『青芽』同人・会友であった仲間のご冥福を祈って1分間の黙祷。続いて主宰者富田さんの御挨拶。富田さんが19歳のときに創刊され、91歳で終刊を迎える『青芽』。今までのことや、終刊号編集期中に肩の骨折で入院をされ、なんとかワープロを打てるまでに回復された近況、今日集まってくれた皆さんへの感謝のお言葉…。続いて、終刊号編集長の言葉、文梨政幸さん。1500人もの詩人が関わった戦後72年に及ぶ富田さんの生涯をかけた文化事業「『青芽』は不滅です!」、最後の『青芽』が7月に発行されますことが伝えられました。同人・会友を代表して、荻野久子さんより富田さんへ花束贈呈。続いてお話のプレゼント。旭川おはなしの会監事で『青芽』会友の中村瑞恵さんによる特別出演「花さき山」の朗読(作・斎藤隆介、画・滝平二郎画の絵本で有名な作品)。14時よりパーティということで、今回兵庫県西宮市からご出席の同人・志々見久美子さんによる乾杯の御挨拶! お食事が運ばれてくる中、円卓の出席者全員による1分間の御挨拶…1分では収まりきらない方々ばかりですが、ご安心ください。計算の上、少し早目にスタートしております(笑)。

■15時より、《自作詩朗読「青芽」同人共演会》ということで、本日ご参加のうち10名の出演者による朗読が行われ、3名の審査員による評価と、会場の全員の方々による投票の総合点から各賞が出演者に贈られます。審査委員席には、審査員長の文梨政幸さん。副審査員長に佐藤勝信さん(ペンネーム・現天夫さん)、佐藤潤子さん。朗読者一人一人がそれぞれの表現手法で自作の詩を朗読しました。

朗読順です。
1 柴田望 「手紙」 (金賞)
2 荻野久子 「詩は心の宝物」
3 佐々木虎力 「明日こそは」
4 本間初美 「挽歌」 (銀賞)
5 志々見久美子 「私からの言葉」 (青芽大賞)
6 宮沢一 「困った爺さんまっしぐら」 (銅賞)
7 菅原みえ子 「妹」 (高点賞)
8 佐藤武 「言葉に翼を、祈りと勇気を…」 朗詠
9 森内伝 「望郷~サハリン・樺太を偲んで」
10 沓澤章俊 「ポンコツとして生きてゆく」

■審査の間、『青芽』最後の同人、二宮清隆さんによる録音メッセージと、作品「星としての青い芽」の朗読を皆さんに聴いて頂き、二宮さんのこと、高校まで旭川に住んでおられたこと、道内の各詩誌でも活躍をされ、北海道旭川の思い出を書いておられることなど、ご紹介をさせて戴きました。
皆様それぞれの個性に溢れる、素晴らしい朗読・パフォーマンス。青芽大賞は、志々見久美子さん。審査委員長の文梨政幸さんからは「大賞の志々見さんは、言葉を追究して、平凡な言葉から垂直な言葉にして、人生の応援歌と考えてもいい。しかもその中には詩の抒情があった。」という高い評価でありました。各受賞者、きらきらの首輪が贈られ…全員による記念撮影。この記念撮影の配列なども富田さんが事前に設定をされ、その図のとおりに迅速に行われたのでした。さすがです。(集合写真をご覧ください。)

■同人代表として宮沢一さんによるお別れの言葉「皆さんの詩を読ませて頂いていつも励まされてきましたし、自分も詩を書いて、自分を励ましてきました」。主宰富田正一さんによる謝辞「まだまだこれから何かやりたくなるかもしれない、新しい詩誌を出して、皆さんにお知らせするかもしれない…」という頼もしいお言葉。また、次世代『フラジャイル』に夢を託してくださった想い。「旭川に来てくださったときには、ただちに参上致します」笑顔いっぱいのご挨拶。名残惜しい限りですが、同人本田初美さんによる閉会のことばで終了致しました。総合司会の大役、柴田が務めさせて戴きました。最後までお付き合い戴き、誠にありがとうございました。

■たくさんのお土産の一つには、いつも詩誌『青芽』の表紙の題字を揮毫して頂いている、富田正一さんの姪にあたります冨田いづみさん(日本習字教育財団正師範・富田翠芳先生)による、一筆一筆心を込めて書き上げられた「青芽」のはがき。
 名残惜しい皆さんJRやバスの時間の許すまで、ホテルの喫茶店でお話をしたり、富田さんを囲んで、本当に楽しい、きらきらとした時間を過ごすことができました。皆様の笑顔を忘れることはできません。誠にありがとうございました。あの時間からもう一週間経つなんて、信じられない気持ち。しばらく気が抜けたようになってしまって、報告に手をつけることができず、遅くなってしまいました。誠に申し訳ございません。時間が経って、またじっくり思い出す、そこでまた、様々なことに気づく喜び。感謝の限りです。

(補足)
・この日、柴田が朗読させて戴きました「手紙」という作品は、昭和34年に亡くなられた同人、山田稔さんについてのものです。
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「 手紙 」

「力強い赤さを持った星が西方へ流れました。あれは貴方なのでしょうか」(内村秀)
「決して再び語ることのなくなった貴方の前で私に許される言葉は本当はない」(渋谷美代子)
「人間の生命とは、いったい何であろうか。未来のある一人の若い生命をうばった孤独な自我は、僕達に何を問うというのだろう」(文梨政幸)
「〈季節〉〈変な話〉〈友情〉〈追憶〉・・・彼の年齢に不相応な苦悩があり、疲れがある。ニヒリズムでありデカダンである」(早川浩
「彼の作品の中に多くある〈航海〉その中に私はまざまざと彼の悲しみを見る」(竹内和雄)
「人生への希望と詩作への自信、そしてその言葉の影にあった懐疑と不安」(山田政明)
「一体、山田君の死を傍観していたのは誰だ」(中村道夫)
「太宰は彼にとっては信仰に近いようなものだった」(佐藤武
「君の詩型は素直で一つの純粋な格詞を持っていた」(小山政明)
「私はまだ君が死んだなんて、信じられない」(富田正一)

これが戦後七十二年の歴史を持つ『青芽』の力
同人たちが詩友の死を悼む追悼号(昭和三十四年十一月)
国学院大学で平安文学を専攻していた詩人山田稔さんは
昭和三十四年八月十九日、東京都多摩川上流太宰治の碑前にて命を絶った
彼はまだ二〇歳だった

「僕は何としても書かねばならぬ。それは自己の生命を一日一日滅してゆくものであったとしても、書くことに自己の一生を賭けてしまったから」
「今日こそは、今日こそはと思う。はかない期待をよせてまた毎日を僕のうちからうばいとるのだ。新たな世界への歩みをつづけるのだ。何がどうとはもとよりわかっていること。すべての知人に手紙をかいて僕の非礼をわびよう」(山田稔
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・昨年12月に『青芽』終刊と『フラジャイル』のことが北海道新聞の全道版で紹介されたその翌日、ある方から電話を戴きました。昔、20歳で亡くなったその方のお兄さんが『青芽』に作品を書いていたので、もしそのときの本があればコピーを送ってほしい、ということでした。沓澤章俊さん(木暮純さん)に資料館での検索をお願いしたところ、まだ名寄で発行されていた頃の『青芽』昭和34年11月号「山田稔追悼号」があった。読んでみると、「山田くん…山田くん…」、才能あふれる若き詩人山田稔さんへの想いが同人全員により、熱く、温かく綴られている。戦後72年の『青芽』の歴史の中でこんなことがあったのかと、驚嘆し、感激致しました。まだ知られていないたくさんの出来事が『青芽』の長い歴史の中には隠されている。それらを紐解いていく重要な仕事が、まだはじまったばかりなのです。
この作品は5月20日に北海道詩人協会の総会と共に行われました「北の詩祭」でも朗読をさせて戴きました。マッコイ・タイナージョン・コルトレーンを追悼しソロで熱演した「naima」をBGMに。
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2018-06-24. 柴田望

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