詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

「 手伝う 」

「 手伝う 」 柴田望
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「世界内=在」にも「世界=内在」にも止る事無しに、
交互に素早く点滅する光の中を無言の儘に行きすぎるのだ ~安部公房「詩と詩人(意識と無意識)」
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尖閣に棲む、わたしが他人の《何か》を書く   
書いているわたしを他人としてわたしが悟る 
他人のわたしに書かれた《何か》をわたしの他人が読む
読んでいる他人をわたしとして放射線分岐壊変に逆らう
わたしの他人に読まれた《何か》を永訣のわたしに束ねる
偽りを見た他人のわたしを《誰か》の精神的支柱に織る
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わたしは一体、《何》をどう見てどう書くのか?
書いているわたしをこれ以上育てられた他人に味わう
わたしが《誰》が《何》をいつどう読んでどう感じた?
読んでいる他人に消された履歴の天秤はついにしずまる
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他人として偽るわたしが他人をしらんぷり全力で飼う
語っているわたしを他人としてわたしの《何》もない核心に迫る
わたしが忘れた《何か》へ即刻他人のわたしが靴を鳴らしてみる
通告するわたしが他人として過去にわたしを陰で踏みにじる
わたしが求める峠のコーカサスの賭が他人の発言を捻じ曲げる
他人として彷徨うわたしは《誰か》を悼む韻律の動詞を重ねる
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今日これからを書く他人を昨日まで《誰か》が居座る
他人の視点で書かれた円錐の不道徳なわたしが明日決定を強いる
読んでいる俯きをあふれだす他人としてわたしが今朝報じる
原理とはかけ離れた声色の他人のわたしが昨夜天碧に身をさらす
書いている他人は液状のわたしである分類に明日の晩産まれる
わたしを読む他人の句点が今宵《何か》の部分的変調を守る
( あらかじめ前触れもなく、思いがけず予期された疎外で )
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( 世界の内に居るわたしが、わたしの中に世界を放つ
わたしの中に在る世界が、世界の内にわたしを誘う )
*

( あなたと出会う )
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