詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■埼玉の詩誌「晨」第17号(2018年6月)を拝受致しました。

■埼玉の詩誌「晨」第17号(2018年6月)を拝受致しました。雑草のような活動をずっとやってきた私から見ると、大変格調高い詩誌。高橋次夫氏、清水榮一氏、中尾敏康氏といった錚々たる方々が中心となって詩質の高い作品群が編まれている。
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 編集後記などを拝見すると、代表が交替されたとのことで、新代表である中尾氏からのご挨拶が掲載されています。「・・・実験道場(※実験という革新の響きを帯びる単語と、道場というどちらかといえば、古めかしい意味合いを持つ言葉の組み合わせ)に集まった詩徒の面々が、切磋琢磨していけばいいのです。そして、内に籠もることなく、「晨」の扉はいつも開けており、今まで以上に外に向けて、発信していきたいと思っています。」という真摯なお言葉。詩誌とは何かと考えたときに、ここに表明されているスタンスに「フラジャイル」も倣い、取り組んで参りたい所存であります。
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 「フラジャイル」同人、「青芽」最後の同人にも加わって戴いた二宮清隆さんが今号より「晨」の編集をされている。とてもお忙しかったとと思います。端正をこめて同人お一人お一人への気配りの行き届いた作品・エッセイの編集。二宮さんの作品「朗誦」。昨年9月に小樽白鳥番屋での朗読会の前に、この作品の原型を柴田へお送りくださり、「朗読」とは何か、お示し戴き、励まして戴きました。
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 二宮さんのエッセイ「夢うつつ」は、昨年12月2日に旭川市7条通7丁目まちなかぶんか小屋にて行われた「フラジャイル創刊記念朗読会」について書かれています。詩作とは何か、詩誌とは何か、朗読とは何かを考えたとき、忘れがちな原点を見失わずに行われることであり、それはすべての仕事に言えることであり、決して忘れてはならないものがあるということに、気づかせて戴きました。
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― 「夢うつつ」 二宮 清隆 ―

■昨年11月から12月にかけ、とても奇妙なことがあった。郷里、北海道旭川から電話があったことから始まる。四十代の柴田望さん、五十代の木暮純さん、私にすれば若手の二人の詩人から「新たに詩誌を立ち上げるので、ぜひ一緒にやりましょう」と、「ご指名」をいただいた。突然のことで、狐につままれた感じであった。
腑に落ちず、断っても、断っても口説かれ、ついには、北海道内詩誌で最も長く発行し続けている『青芽』主宰の富田正一さんより電話をいただいて、私は受諾するしかなかった。でも、どこか腑に落ちない自分が居た。
 二人に会って話をしたいと思い電話をした数字後、「旭川に来る日の夜に新詩誌『フラジャイル』創刊記念朗読会を開催します」と連絡があり、またまた驚かされた。迅速な行動力、企画力に付いていけない。この二人は怖いものなしだなと、怖くなった。
 12月2日、旭川空港に昼過ぎに着き、柴田さん、木暮さんが迎えにきてくれて、雪降る中を最初に案内してくれた所は、高校時代の恩師で文芸評論家、故高野斗志美さんのお墓であった。30センチ近い雪を三人で、素手で払いのけ、「先生、来ましたよ」とお参りをした。
 急な朗読会開催で、来場される方がいるのだろうかと不安に思った。旭川の凍った歩道を歩いて会場に着くと、四十名くらいでいっぱいになる小さな会場であった、彼らは、マスコミも使って告知をしたようで、何と高校時代の同級生が開場前に会いに来てくれた。「記事を読みながら、たぶん、あの二宮だよな」と思って、半信半疑で会いに来てくれたのであった。卒業以来だから50年以上も経ち、彼は年相応のおじいさんになっていて、自分もそのような感じに見えているのだろうなと思った。「これ、土産に持っていけ」と数の子を手渡され、感激した。
 朗読会の開場をすると、高野先生の奥様がいらしてくださった。木暮さんと親交があるとのことで、柴田さんにとっては大学での恩師の奥様で、私達三人は高野先生つながりなのだと、はっきりと腑に落ちた。
 心配した朗読会の来場も満杯に入り、立錐の余地もない。この二人の詩人には驚かされることばかりだった。友情出演で小樽詩話会の同人、長屋のり子さん、村田譲さんが駆けつけてくれて、朗読者を大いに盛り上げていただいた。夢を見ているような一日だった。会場を片付け、外に出ると、ふわふわの牡丹雪が降り落ち、ほてる頬を覚ましてくれるようであった。

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