詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

『弦』72号(2018.9.1)

■渡辺宗子さんより『弦』72号(2018.9.1)をご恵贈頂きました。誠にありがとうございます。

 いつも『弦』を戴くと、私は創作の原点について考えさせられます。「弦」とは弓矢の弦のことならば、目標に向かって引き絞られる、矢が放たれる以前の重要な役割を持ち、楽器(ピアノやギター、琴、三味線・・・)の弦を考えるならば、音程が調整された状態で奏でられるのを待つという、音が発せられる以前の重要な役割を持ちます。いずれも丁度よい強度に張られていなければならない・・・
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■今回の『弦』、色彩が織り成す荘厳なイメージ。恐縮ながら誤読を恐れず・・・1ページ目は、どこまでも広がっていく空(「青空の青い短冊/風にゆれて光ります/空の高みはすずしい風」~「か細い草」 嵩文彦)の《青》。そして2ページ目は夕暮れ、林檎、(「手旗を振った/精いっぱいに/不幸を励ます/煤けた林檎」~「夕暮れの林檎」 渡辺宗子)国旗の《赤》に埋め尽くされた時代の差異。3ページ目は夕陽の《赤》と《紫》(「四季が絢い交ぜた一彩に見える/いまどきむらさきの頃と呼んで/藤や紫陽花が夕陽に匂う道/ステッキは/おろおろ歩いていく」~「ミドリ亀の家(2)」)、そして4ページ目は天然石ラピスラズリの《青》(「ギルガメッシュ叙事詩」-第一書板 暴君ギルガメシュ王-)・・・『ギルガメシュ王の物語 ラピス・ラズリ版』司 修 (画), 月本 昭男 (訳)(ぷねうま舎)、青くて美しい本です。
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■《青》と《赤》(混ざった《紫》も・・・)、二つの色が最大限に引き絞られて、想像力が解き放たれる。古代文明叙事詩へ、無機質な世界に棲む哲学者の寓話へ、真紅の夕日に重なる林檎へ、青空を栞にする、ネクタイの都会へ・・・
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■「コンクリートの見えない隙間から/やっと生えでている/ほそぼそと顔色の悪い一本の草/いつ振るかわからない雨です」(「か細い草」  嵩文彦)

 さくらももこさんが53歳の若さで亡くなられました。「ちびまるこちゃん」には優しいおじいさんが登場します。しかし、モデルとなったさくらさんの実際のおじいさんは、とても冷たくて意地悪だったそうです。「こんなおじいちゃんがほしかった」という理想から、いつだってまるこの味方、孫への愛情溢れる友蔵のキャラクターは生まれたとのこと。このエピソードを聞いて、「ちびまるこちゃん」の見方がガラリと変わりました。

 一昨年のクリスマスに亡くなった、世界的大スター、ジョージ・マイケルの本名はイェオルイオス・キリアコス・パナイオトゥ。少年のころ自分の空想の中で思い描いた、強くて優しい架空のヒーロー、「ジョージ・マイケル」を自分の芸名にしました。もう一人の架空の自分として、「ジョージ・マイケル」を名乗りました。

 「コンクリートの見えない隙間から/やっと生えでている/ほそぼそと顔色の悪い一本の草」・・・どこまでも広がる自然の象徴である青空のコントラストとしての、コンクリートの無機質を突き破り、生命を謳歌し、「いつ降るかわからない雨」と共振している。いつか「都会のネクタイ」となり「青空を栞に」し、「青い短冊となる」可能性を秘めたその草は、実はもの凄く強い存在なのではないかと、想像力を飛ばしつつ、拝読させて頂きました。誠に、ありがとうございました。「青空の青い短冊/風にゆれて光ります。」(「か細い草」  嵩文彦)

■ 『弦』 72号  編集発行 渡辺宗子

・ 「か細い草」  嵩文彦

・ 「夕暮れの林檎」  渡辺宗子

・ 「ミドリ亀の家(2)」  渡辺宗子

・ 「ギルガメッシュ叙事詩」-第一書板 暴君ギルガメシュ王- 渡辺宗子

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