詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

《福士文浩 小詩集》

いよいよ9月26日~10月1日、
フィール旭川5階のジュンク堂書店にて
展示「『青芽』から『フラジャイル』へ」が行われ、
9月29日(土)15時より朗読会イベントが行われます。
この日、オープニングパフォーマンスを務めて頂きます、
苫小牧の詩人、福士文浩さん(詩誌『オオカミ』同人)より、
友情の応援のメッセージと作品をお送り頂きましたので、
「小詩集」というかたちでここに収めさせて頂きます。
道内各地、今年は横浜でも朗読パフォーマンスを行い絶賛好評、
福士さんの作品4篇です。
昨年の4月22日、豊平館の朗読会で初めてお会いしたときに
朗読された思い出の作品「π」もここに。
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■福士さんの朗読、YOUTUBEでも閲覧できます★
福士文浩「天の川の小石」「第1回 ぽえむ・ライヴin豊平館」20180428

youtu.be


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《福士文浩 小詩集》
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「 記憶は旅人 」
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その人は姿を見せず
声を発することもなく
自ら素性を明すこともない
しかしわたしのそばにいて
悩みを打ち消す手掛かりや
的外れなメッセージや
守るべき約束を教えてくれる
そしてまるで旅に出たかのように
何日も音信不通となり
突然遠い場所から手紙をよこす
ずっと昔に読んだような
その手紙を見てわたしは思い出した
とても不思議なその人は
過去と未来を往復しながら
形のない宝物を運ぶ
記憶という名の旅人だった
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「狙撃手」
*

暗闇に身を潜めて
深く静かに呼吸をすると
無数の眼差しが発する
沈黙のざわめきが聞こえる
混沌の中でも見失わない
想像の一点に狙いを定めて
狩人のようにゆっくりと歩く
手の中の銃が火花を発ち
懐の花吹雪が乱れ飛び
沈黙の中からどよめきが湧き上がる
その時は今だ!
*

 

「 π(パイ) 」
*

その数は割り切れない
小数点のあとに
ぞろぞろと続く数字の群れ
円という単純さの中に秘められた無限
*

割り切れない数でできているから
円周のすべての点は
中心から等しい距離を保ち
夥しい数字に支えられて
円はどこまでも転がってゆける
*

もしも
円が割り切れる数でできていたら
円周のすべての点は
中心から遠いものと近いものに
分け隔てられ
円を支える夥しい数字は
すべて消されてしまう
もはやそれを円と呼ぶことはできない
*

割り切れること
割り切れないこと
決めるのはどこの誰なのか
あてもなく問いかけるわたしは
群れの中のたったひとつの数字
*

 

「チョコバー」
*

バスの座席で夕焼けを見ていたら
学生と思し女の子が
反対側の席に座っているのが見えた
他の客はみんな降りて
バスの中には彼女とふたりだけ
こんな遠い所まで帰るのか
疲れた顔で外を見ていた彼女は
鞄からチョコバーをかじるたびに
彼女は褐色の香りに包まれて
その瞳にふたたび輝きを宿す
一日の終わりに訪れたとても小さな幸せ
どうかその輝きを忘れないで
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福士さん、ありがとう。
当日、楽しみにしています!!

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