■ある幼年期の肯定のために、新月へ向かって儀礼励まし、
無が有へ変わりますように。本日校了とし、小樽詩話会(会報620号)へ送ります。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「 顔 Ⅷ 」
*
桜が丘小学校にさんねん
卒業アルバムに妖精が写ってた
帰り道に水辺
釧路川か
春採湖かもしれない(遠すぎる)
水も木も草の背もさやかに光り
虫の音をかき分け
仙人に会いに行く
行き方を何故か忘れて
辿り着けない日もある
川原全体きらきらして
おじいさんは穏やかに座る
長い髪 長い髭 亀の尻尾
ずっと伸びているように感じる
弟や友だち何人かも連れて行った
子どもにしか見えない夢じゃない
おじいさんの前に座る甕は
家を建てるとき玄関の前に溜める器
永久にきれいな水が入っていました
住んでいたのは興津(o-u-kot)で
春採湖か
鶴ヶ岱だろうか(遠すぎる)
大人になってからも
きれいな水がそこにあったと繰り返す
甕を覘くと境は薄くなって
話したことはぜんぜん憶いだせない
ぜんぜん怖くないし
学校から三〇〇メーターくらい離れた
美しい世界
同じ道を辿っても親と行くと
その場所は無くて
春採(haruturu)に転校するまで
何度も行ったはずなのに
弟は憶えていない
*
o-u-kot = 互いに合流する川
haruturu = 向う地
*