詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

「 顔 Ⅸ 」
*

見えないからこそ見えるのか

見えないあなたが縫った赤い長襦袢
美しい仕上がりでした

見えないものは見えぬのか

お母さんは目が悪くて買い物に行けなかった

裾が短すぎて 靴下なくて 寒くて 笑われました
友だちは皆温かい服を着て 笑顔でした
寒さを知られたくなくて 笑顔で 強気でした

見るに見かねたおばあちゃんがたまに買ってくれました

友だちは可愛いエプロン 家庭科の時間していました

服も靴もきつくて 靴下なくて裸足で
困っていると言えなかった

見るって何? 見えないからこそ見える
この世のどこにも存在しないほど素敵な服
素敵な靴を履けないからこそ描ける
将来の夢はデザイナー
制服になるまで服のない子どもでした

目の見えないお母さんが縫ってくれた
赤い長襦袢 誕生日に突然贈られた
二十歳のサイズに驚くほどぴったりでした

見えないふりして 
思い描くことを通り越して
ずっと見ていてくれたと気づく
そのときの
*

2018-10-19.

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