詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■阿部嘉昭さんの新詩集 『日に数分だけ』(響文社) 出版!!

阿部嘉昭さんの『日に数分だけ』(響文社)

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「みずしぼりという/からくりをひろった/かめらのたぐいだそうだ」(みずしぼり)という詩句を読み、自分が小6の時、写真部所属だったこと、暗室や引延機、液体の酸っぱい匂い、20年以上忘れていた記憶を鮮明に、揺さぶられた。「ひびわれをおしむうち/ひとみにひびのはいるのも/みるのさだめだろうが」(みずしぼり)。現像に失敗して、光の線を描いてしまった印画紙を何年も大切にしていました。
 表紙も帯も、めちゃくちゃかっこいい。Joy Divisionや、New Orderのフロッピー・ディスクをイメージしたシングルジャケットのような趣き。本のサイズも素晴らしい。会社の机にビジネス書と一緒に立てても違和感がない。カバーの高さが絶妙で「日に数分だけ」の「に」が見え隠れする演出に心くすぐられる。カバーの色が暗くてバーコードが読みにくそうなところが素晴らしい(実際は読めます、やってみました)。実用的なものが実用できない、という現実が至る所に潜むし、詩集が実用的である必要はない。しかし、日に数分だけ休憩し、24時間体制で働いている私にとって、この詩集を読む経験から、今現実に直面している困難な問題解決のヒントが無意識層に流入され、熱い数分が、その他のあらゆる数分に影響を及ぼしていることに心より感謝申し上げます。