■ミカズキカゲリ様より、記念すべき第一詩集『水鏡』(コールサック社)を御恵送戴きました。心より御礼申し上げます。
■存在について、真摯に向き合った詩集です。
存在の根拠を、価値を失い続けることが、
一個の生をありありと逆照している、
その極点に辿りつく宣言を行ったとき、
詩人ひとりの問題ではなくなる、解き放たれる、
共感と衝撃を受けた、沢山の言葉の中から、
一篇を引かせて戴きたく、
大好きな小熊秀雄の詩句、〈薔薇は闇の中で/まっくろに見えるだけだ、もし陽がいっぺんに射したら/薔薇色であったことを証明するだろう〉(「馬車の出発の歌」)に、私の中で、高らかに、響き合う詩篇です。
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闇。
闇はわたしから何も奪わない。
ひんやりと冷たい闇。
闇だけがわたしをかくまってくれる。
闇がなかったら、わたしはもう生きてはいかれない。
密度の濃い闇ならば、浸透圧で流れ込む。
けれど。
今夜の闇は濃度がうすく、逆にわたしが流出する。
恐ろしいほどに、闇とわたしが均一になってゆく。
そして、それはとても心地よい。
このまま闇に溶けてゆき、「なんでもないもの」になってみたい。
ただの「空間」になってみたい。
闇とわたしの浸透圧。
(「闇」ミカヅキカゲリ詩集『水鏡』より)
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■なんでもない、空間の、闇と均一の「わたし」に、万雷の拍手を!!
今宵、Nick Cave and The Bad Seeds の名盤The Boatman's Call (1997)より、心地よいThere Is a Kingdomを、聴きながら!!
https://youtu.be/kL7q79kFWQQ