詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

堀江 敏幸氏の「2018 この3冊」に、『火ノ刺繍』吉増剛造著(響文社)!!

■昨日アップされていました・・・堀江 敏幸氏が選ぶ2018年の3冊に、吉増剛造先生の『火ノ刺繍』(響文社)が紹介されていました。

「重量感のある大冊だが、読み手を圧倒したりはしない。どの頁(ページ)も風の形象のように軽く舞う。ただし言葉は飛散しない。糸でしっかりかがられている。指でなぞると、所々に存在の突起みたいに感じられる糸瘤(いとこぶ)が、小さな光を放つ。」

この一冊を携えて道内各地を巡った2018年、たくさんの方たちが吉増先生の講演に集まり、お話にじっと耳を澄ませ、この厚くて大きな本を買って、サインに並ぶ現場を目撃したこと、忘れられない宝物の憶い出、どのページもしっかり、かがられています。embroidery

小誌「フラジャイル」第4号(2018-12-20発行)に掲載させて戴いた杉中昌樹さんの詩論「吉増剛作用語集15」に、「・・・・・・・」は刺繍の針の穴であるとのご指摘に新鮮な驚き。10月21日に吉増先生が酒井忠康氏と対談されたときに吉田一穂自筆の「、」「。」点が《真ん中に来ている》ことに驚かれた、そのレベルに近いような、私たち常人とは違う、別次元の研ぎ澄まされた感覚・・・感動しました。北海道に火が刺繍された一年でした^^

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堀江 敏幸「2018 この3冊」C・P・カヴァフィス『カヴァフィス全詩』(書肆山田)、吉増剛造『火ノ刺繍』(響文社)、スズキコージ作/かたやまけん絵『やまのかいしゃ』(福音館書店)

2018 この3冊
(1)『カヴァフィス全詩』C・P・カヴァフィス著、池澤夏樹訳(書肆山田)
(2)『火ノ刺繍』吉増剛造著(響文社)
(3)『やまのかいしゃ』スズキコージ作、かたやまけん絵(福音館書店

(1)は本当に長く待たされた一冊。現代ギリシア語による百五十数篇の詩を日本語に移し替えるのに、訳者は四十年の歳月を費やした。『現代詩手帖』に連載されていたこの訳業に触れたのは、二十歳の頃だ。もう来ないかもしれないと思っていた麗しい蛮族の来襲を喜びたい。

(2)は重量感のある大冊だが、読み手を圧倒したりはしない。どの頁(ページ)も風の形象のように軽く舞う。ただし言葉は飛散しない。糸でしっかりかがられている。指でなぞると、所々に存在の突起みたいに感じられる糸瘤(いとこぶ)が、小さな光を放つ。

(3)は版元を変えての、久々の復刊。主人公のほげたさんは、現代社会の蛮族だ。人や時間の流れと反対方向に進む勇気を、渾身(こんしん)の脱力をもって示してくれる。あたりまえの風景を次々に異化していく彼の姿に、深く励まされた。

 

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