詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■渡辺宗子さんの『弦』73号(2019.1.1)

■渡辺宗子さんより『弦』73号(2019.1.1)をお送り戴き、まず嵩文彦さんによる冒頭の詩「つゆのいのちのはてまでも」に瞠目!「あなたの細胞のたいせつな/もっともたいせつなひとつを/わたしにゆづってください」 家の鍵よりも重い、生きてきた時間全体の存在の鍵、そんなものを譲ってしまったらDNAを解析され、クローン人間を造られてしまうかもしれない。例えば小さな皮膚の欠片や、血液のしずく、些細なものであるようで、生命の情報が詰まった宇宙であり、目に見えなくても、無限の営みが永劫に繰り広げられる。「わたしのいのちの尽いはてたあとまでも/あなたのいのちに/つゆが宿った/あとまでも」・・・〈ゆづる〉〈尽いはてた〉古くて新しいような印象的な言葉の響き。

 渡辺宗子さんの「半眼微笑のオマージュ」は、11月4日に(公財)北海道文学館で行われた朗読会「一穂への遙かなる最弱音ピアニツシモ)」にて宗子さんが朗読された、私にとってはとても想い出深い作品です・・・。そのとき僭越ながら柴田はピアノ伴奏させて戴いたのでした。確か吉田一穂「道産子」を読まれた後に、朗読されたはず。一穂のさまざまな作品が想起される硬質な詩句。「茫洋と展けた彼方に/世界の真珠海市(かいやぐら)/高くいななく/道産子の瞳に映して」吉田一穂がその生涯で視てきた景色、一生をかけて編まれた詩のビジョン達が、道産子の瞳に荘厳に重ねられているよう。「無限と永遠のはざま/鷲が舞う」

f:id:loureeds:20190114080825j:plain