■詩誌「サラン橋」第19号(2018年11月)を拝受致しました。コールサック等で作品を拝読致しておりました、催龍源さんの「アルディピテクス・ラミダス猿人に捧げる組曲」に圧倒される。アルディピテクス・ラミダス猿人とは、「*約四四〇万年前、エチオピアに生息していた、人類の最初の祖先と推測される猿人。」のこと。11月に北海道詩人協会で原子修さんより、「縄文時代の過去に遡ることで未来をえがく、それが詩人の仕事です。」と言われたことを胸熱く想い出しつつ。組曲は「1蝶」「2少年」「3悠久」「4まなざし」の四部作。本文の中に猿人は登場しない。猿人のまなざし、猿人の内部に景色が、宇宙が育まれていく。「だれだろう ぼくのなかの宇宙で/祝祭のように 星の子どもたちを集めては/青く澄んだ水の星を 作ろうと」 今現代にいる私たちが対峙している現実は、人類の最初の祖先が対峙していた現実に比べて、どうであろうか。人類の最初の祖先たちから見て、私たちの存在は、向かっている先は、どうか。私たちが存在している今ここを、物語のはじまりの起源に置き換えることは可能だろうか。「むけられているまなざしに はじらい/ながらも また生まれようとする いま/ここに 実存することに気づかされたものたちよ/すべてを受け入れ 世界に物語るはじまりよ」
そして詩誌の最後を飾る、岡田ユアンさんの「囀る、光の粒」に、時空を超えて宇宙の起源に案内されて、荘厳な光の織り成す生命のシンフォニー、海の街に住んでいたときに海岸で見た景色、吸った空気を、雪の街の凍る朝の光の粒子のダイヤモンドダストの積雪を、結晶の暁を迎える祝祭。「これは祝祭なのでしょう、あなたの、/宣誓に付帯する祝祭なのですよ。ほどかれ、むすばれる/絶えず交わされる約束なのです。宣誓につづく宣誓、」光の出入り口、生命エネルギーの根源、「トーラスの出入り口に。ひるむことなく/臆することなく。ただ目を閉じ、旋回する、ああ」回転体の変数を見破る詩人によって、繰返しの日々の仕組みを暴かれた喜び。私たちが放り込まれた世界に、詩句に、感謝の限りです。