詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「サラン橋」(第20号 2019年7月)

■詩誌「サラン橋」(第20号 2019年7月)をご恵送戴き、誠にありがとうございます。
 「愛」は韓国語で「サラン」であると、先月、柴田三吉さんが小熊秀雄賞の贈呈式で旭川にお越しになられた際、お教えを戴きました。今年度の小熊秀雄賞受賞作、柴田三吉さんの『旅の文法』(ジャンクション・ハーベスト)、表題作で、「愛はどこですか」の質問に、少年僧がはにかみながら自分の胸を指さすというシーンがあり、選評の際大変話題になったのですが、個人的な恋愛の域を遥かに超えた人類全体への愛が「サラン橋」の「サラン」のようで、Sinéad O'Connorの“Nothing Compares 2 U”は地球愛・人類愛的に聴こえるが、作曲者であるPrinceのバージョンはラブソングに聴こえるような、解釈によって印象がかなり変わる、一つの詩も読み手によって印象が大きく変わるということがありました。
 安部公房が20歳のときに書いた詩論『詩と詩人』に「世界内=在」(世界の中に自分がいる)と「世界=内在」(自分の中に世界がある)、この二つの状態のいずれかにとどまらず、両方を絶えず行き来するのが詩人の宿命であると書かれていたことを想起しつつ、大きな視点から、「サラン橋」に収録されている詩8編、評論、小説を拝読させて戴きました。崔龍源さんのシンフォニー「四十億年のいのちを主題とする組詩」、深い感銘を受けました。人類の始原から現代まで。地球の誕生から現在までの長い時間からみて、いまこの瞬間に向き合っている悩みなんて、塵の一滴にもすぎないのですが、いまを変えない限り未来も変わらず、長い時間、広い視野で様々な問題を考えなければならないと改めて実感しつつ、読ませて戴きました。心より御礼申し上げます。

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