詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「詩めーる旭川」第17集(旭川詩人クラブ 2019年11月1日発行)

■「詩めーる旭川」第17集(旭川詩人クラブ 2019年11月1日発行)が届きました。東延江さん、立岩恵子さんによる秀逸なる編集☆ 各会員の詩が輝いており、エッセイも興味深いものです。旭川文学資料館でお求めになれます(頌価500円ですが、もし御覧になりたい方がいらっしゃいましたら、私の手元に何冊かあります。メッセンジャー戴けましたら、お送りできます^^)。旭川詩人クラブは昭和の時代に下村保太郎が発足。鈴木政輝など錚々たる詩人が参加した歴史があります。下村氏の後継者として、富田正一(「青芽」「青芽反射鏡」主宰)さんが会長を務めておられます。
 また、私はこの日仕事で欠席せざるを得ませんが、11月5日(火)、当クラブ詩画展のイベントがあります。オレンジ色のチラシ画像を添付させて戴きます。会員が自分以外の詩について意見を出し合うという、合評会形式のものです。「年月、歳月」をテーマにした作品であります。こちらは一般公開もされますので、ぜひお気軽にお立ち寄りくださいましたら幸いです。沓澤章俊学芸員がいつも素晴らしい展示を作っておられます、旭川文学資料館(〒070-0044 旭川市常磐公園)で行われます。

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「片山晴夫先生のこと」 柴田望

旭川大学経済学部一年の前期後期、選択式教養課程で片山晴夫先生の「文学Ⅰ・Ⅱ」を履修。先生の講義は古代~近代の日本文学。難しい話も学生目線で分かりやすく、あのよく通る大きな声で、励ますように論じてくださいました。平成一〇年、大学四年で参加した開館直前の三浦綾子記念文学館「おだまき会」発足の勉強会で片山先生の講義を聴講。三浦文学の魅力を分かりやすく語ってくださいました。大学を卒業し岩見沢、小樽で六年学習塾に勤め、旭川で転職し、いまの会社に勤めた最初の年、新人の私がふと電話を取ると、凄くいい声のお客様…なんという偶然! 片山先生から灯油配達の注文を戴いたのでした。(励まされた気持ちでした。) 
 それから一〇年後、〈東鷹栖安部公房の会〉の講演で再会。以後毎年、最前列で聴講し講演録を作成。「戦後はまだ終わっていない、国境の問題はまだ終わっていない」「永遠性などというものはない」、戦後文学としての、又、アウトサイダー、文学の破壊者としての安部公房を、熱く語ってくださいました。『砂の女』に出会ったとき、「イメージの展覧会」へ奥様と足を運ばれたとき、三浦綾子の『氷点』『塩狩峠』を初めて読んだとき「がつんと頭を殴られたような衝撃」を受けた、とお話された片山先生の笑顔を忘れられません。

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「雪だるま」  柴田望
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パソコンだらけの事務所に贈られた
電磁波を吸い取るサボテン
「こんな寒い夜にお宅のお嬢さんたちを
外に出していないでしょうね」
温かいお電話 深い場所で響く
誰かに嫌がらせされた記憶も
優しさにすっと吸われる
事務員の一人に過ぎぬ私になぜ
義務でも形式でもない 
透き通る言葉をかけてくださるのだろう
きっと誰にでもお優しいから自然なのだろう
その方の書かれた『雪だるま』という本を開く
大切な旦那様、お子様たち、
ご兄弟、ご親戚、お知り合い、
名前も知らない、すれ違うように見えて
同じ太陽が照らす雫
分け隔てなくひとを気遣う想いが
無限に広がる景色に深く響く
サボテンのとげは柔らかいブラシで
晴れよりも雪の日が温かい
優しい言葉も そうでない言葉も 
材質は同じ ひとの「声」と「想い」
そのすべてを静かに聴いている 
雪だるまが温かく見守る
*

「詩めーる旭川」第17集(旭川詩人クラブ)に掲載

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