詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■北海道詩人協会「北の詩祭」2019

11月2日(土)、札幌市教育文化会館にて13時30分より、北海道詩人協会「北の詩祭」が行われ、全道より詩人の皆様が集結、朗読と合評の会が執り行われました。
 村田譲会長による、現状と課題、今後の方向性についてのご挨拶のお言葉に続き、「北の詩祭」実行委員長の菅原みえ子さん、司会の鈴木たかしさんによる進行。「みずをテーマに~その行方をたずねて」作品(自作詩ではなても可)ということで、「水」を主題にした詩作品の朗読を披露。
 
・中村喜代子さん  「雑草魂」
・小篠真琴さん 「海が見たい」(「フラジャイル5号」に掲載※)
・石井眞弓さん 「小さな聲」
・渡会やよひさん 「係類」
・金石稔さん 「織り布の連鎖を偲ぶただひとつの時空、あるいは奔流庭園のまぼろし・抄」
・三村美代子さん 「水の夢」
・原子修さん 「石狩川
・森れいさん 「水」
・若林淑美さん 「雨季」
・柴田望 「顔~水のイメージ」(「フラジャイル5号」、「小樽詩話会会報614号」に掲載※)
・長屋のり子さん 「私は透明な甕になる」(「游人24号」「フラジャイル6号」に掲載※)
 
 「奔流しながらせき止められ/静かな水面に煌めくもの/偽のからだ」…金石稔さんの朗読、紡ぎあげられていく映像、詩句の煌めきに酔う。原子修さんは「烏賊づけ」「チェロンの舟」の二作品を予定されていたのですが詩碑に刻まれている「石狩川」に変更、変更しても何も見ないでしみじみと朗読される凄み。斉藤征義さんを追悼する森れいさんの「水」に心打たれ、最後は長屋さんの「私は透明な甕になる」。「遊人」に掲載、「フラジャイル」にも掲載させて戴いた特別な作品。「フラジャイル」同人の二宮清隆さんによると「長屋さんはとても声がよい。朗読は滑舌もよく胸に響きます。天性のものでしょうから、追いつくことはできません。でも、目指すべき極みです。」まさに。
 柴田は小樽詩話会の614号に書かせて戴いた「顔」を朗読。

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 全員の朗読が終わっても予定終了までまだ30分あります(!)とのことで、村田譲会長、本庄英雄さん、坂上審亮さん、菅原みえ子実行委員長の朗読も思いがけず拝聴することができ、とても勉強になりました。一人一人が時間を止める力を持っており、それぞれの声深く、異世界へ迷い込ませる力をもった瞬間が幾つも訪れました。
 
 第二部は合評会。「北海道詩集」No.66(2019年版)を編集された田中聖海さんの御挨拶でスタート。5班に分かれ、それぞれの作品についての評、気づき、それぞれの視点。柴田は4班にて長屋のり子さんのご進行、石井眞弓さんが記録係。順番に本人が朗読し、時計回りに意見を述べる。自分が読者であると同時に作者になった気持ちで作品に取り組まなければ発言はできない。それは真剣なものです。以前は朗読はしない、作者本人は自分の作品について発言しない、という暗黙のルールがあったそうですが、今回4班は本人も積極的に自作について発言しよう、ということになり、作品のイメージが非常に深まりました。不思議なのは、合評会が終わった後に「北海道詩集」を読んでみると、まったく違った様相を帯びてくるということで、これが散文や小説とは違う、詩という形式特有の味わいなのかもしれないと思えたことです。「読む」のではなく、紙面から浮き上がってくる、ページを開いているこちら側にとびこんでくる、そういう儚い瞬間との接続に目覚めるときです。
 
 会場を移し二次会は中央区南2条西4丁目の蛯天分店さんにて、普段なかなかお会いできない皆様との貴重な時間を過ごすことができました。本会には参加できず、二次会から参加の方も。髙橋順子の詩や車谷長吉の小説のこと、8月31日の支倉隆子さんの詩劇のこと、現役時代にある詩人の方が旭川でどんな仕事をされていたか、父と同郷の尊敬する詩人の方の想い出、どんな詩人を特に読んでいたの?という質問にはいつも通りはっきり答えられず(笑)自分をもっと掘り下げなければならないと反省。
 お一人お一人のスピーチで、皆様から興味深いお話を戴きました。このときに尊敬する女性の詩人の一人の方が、今日の合評会の皆様の作品について「ほとんどが推敲されていない、もっと推敲すること」「書いているうちにもう一人の自分に出会うこと」「異世界へ連れて行ってくれるような作品を読ませてほしい」と、飲み会の席なのにストレートに発言されていたのが清々しく印象に残り胸打たれ響きました。二次会の後、俊カフェさんに「フラジャイル」を届けてくださった小篠真琴さんとすすきので合流し、三次会に参加。人生の大先輩である憧れの詩人の方々にさまざまなお話を伺い、励ましのお言葉を賜り、忘れられない夜となりました。年に一回の大変に大きな会を企画され、運営された委員会の皆様、貴重な機会を賜りましたこと、心より厚く感謝申し上げます。

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