荻野久子さん 新詩集『記憶の風』
出版祝賀会 2019年12月1日(日)
日常生活を的確にとらえた爽やかな作品群であり、その筆致はキラリと光る言葉があって確かな視線が見えます。 (富田正一)
■詩歴60年、詩誌「青芽反射鏡」「フラジャイル」同人の荻野久子さんが10月、青い芽文芸社より新詩集『記憶の風』を出版されました。ご家族との思い出や農業を営んでいた時代を振り返った感動的な詩集。
12月1日(日)、ホテルWBFグランデ・マルウンホール3F鶴の間(旭川市宮下通10丁目3−2)へ、市内外より荻野さんの詩友、御親友、御家族、21名の皆様が集い、詩集収録作品のスクリーン映像・朗読鑑賞、祝辞、祝詩の朗読、たくさんの花束、遠地からの数多くのメッセージ…、拍手と温かい笑顔に包まれた盛大な出版祝賀会が行われました。
地球上の生き物の数の分だけの、生命の表現があるということを、この詩集に収録の「ならず者」という作品が教えてくれました。受け入れる大きな器としての自然の姿、それに向き合う一人の詩人の像がくっきりと浮かび上がってきます。「今日も筆を」自分の生き方を見つめるように、戦後の体験や時代の変遷、農作業の思い出、家族への愛と感謝、爽やかな記憶の風を編み出す荻野さんのひたむきな姿勢に深い感動の声があがりました。
https://youtu.be/AdfqFDmp770?fbclid=IwAR0LE2SFGsBMhjWujgP3JCTt6JUhEOmUZ6wqNr0im6RsMvJBWLVU_fWBCyc
(発起人代表 柴田の閉会の挨拶)
皆様、本日は誠にありがとうございます。発起人代表として、裏方の一人として壇上ではなくこちら(司会席)からご挨拶をさせて戴きます。私は「フラジャイル」代表の柴田望と申します。2017年に、富田正一さんより、「青芽」の後継誌をやってみないかと言われ、ぜひやらせて戴きますとお答えし、同年2017年の12月に、まちなかぶんか小屋で創刊記念の朗読会を行いました。その会の当日に、尊敬する大先輩の詩人のお一人である荻野久子さんからお電話を戴きまして、なんと、フラジャイルに同人としてご参加戴けると仰って戴きましたことを、昨日のように記憶致しております。記念会には荻野さんより、素晴らしいお花も会場に戴きました。本当にありがとうございました。
現代詩というのは、読めば読むほど、書けば書くほど、非常に深い世界になります。書く詩人、それを読む読者の感動、感想を伝えることもまた表現の一つと考えられます。あらゆる創作が行われ、あらゆる感想が伝えられ、あらゆる表現がいまこの瞬間も行われている。地球上の生き物の数の分だけの、生命の表現があるということを、この荻野久子さんの詩集『記憶の風』の「ならず者」という作品が教えてくれました。「無数の命が宿っている」「生きる種を撒く」「いっせいに芽生えの時を迎える」その膨大な種類の生命の表れのすべてを、受け入れる大きな器としての自然の姿、それに向き合う一人の詩人の像がくっきりと浮かび上がってくるものでした。決して差別したり、色分けをして敵と味方に分かれるというようなものではない、一つの畑の面積から、世界の平和の在り方が提示されているものと、衝撃を受けました。
それは、戦争が終わって、これからは心の自由の時代だ、詩を書ける表現の時代だと、一冊の詩誌を創刊して、72年もの間、詩人の表現を守り続け、平和の歴史を築きあげた「青芽」主宰、富田正一さんの姿勢に通じるものであります。今回、富田正一さんが常日頃荻野久子さんの詩を評価され、ぜひ詩集にまとめるべきと励まされ、一冊の感動的な詩集にまとまったと伺っております。本日の会の実現も、富田さんの細かいところまでの心のこもった御指導により実現することができました。本当にありがとうございます。
富田正一さんの「青芽反射鏡」、そして私たちの詩誌「フラジャイル」に、素朴であるからこそ豊穣な詩句に溢れた、読者に響く作品を書いておられます荻野久子さん、この詩集の最後の作品、「今日も筆を」のようなひたむきな姿勢で書かれていることが伝わってくる、この時代にとって大切な作品が、これからも詩人・荻野久子さんの筆によって書かれますことを、楽しみにさせて戴きつつ、また、多くを学ばせて戴けましたら幸いです。月並みにて誠に恐縮ながら、皆様のご健康とご多幸、ご健筆をお祈り致しつつ、閉会の御挨拶とさせて戴きます。荻野さん、本当におめでとうございます!! 皆様本日は誠にありがとうございました。