詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

メディアあさひかわ2月号   p155「【文芸】詩誌「フラジャイル」の第7号刊行 特集に故・片山晴夫先生の講義録掲載」

■本日1月15日発行の「メディアあさひかわ」2月号に、詩誌「フラジャイル」第7号について、まるまる1ページに大きく紹介を戴いております。誠に、ありがとうございます。

 今回御寄稿を戴いた帷子耀さんの詩作品「作文」、山田亮太さんの「この世」の御紹介、杉中昌樹さんの「吉増剛造『火ノ刺繍』(響文社)を読む」6節の分析について、また、フラジャイル同人小篠真琴さんの短歌(第16回三輪山まほろば短歌賞 松崎英司選入選)のことなど、丁寧に紹介を戴いております。「短信として」「岡和田晃さんの詩集『掠れた曙光』(幻視社)が茨木文学賞詩部門の賞を受賞したことも伝えている。」ことも!
 
 p155「【文芸】詩誌「フラジャイル」の第7号刊行 特集に故・片山晴夫先生の講義録掲載」を見出しに、「追悼の言葉」として紹介戴きました柴田の詩をここに。2018年の「東鷹栖安部公房の会特別講演」で片山先生が仰られた言葉と、そのときの感動を想起しつつ。いつも明るく応援をしてくださった先生の笑顔に感謝をこめて。
 
 「 壁 ―片山晴夫先生へ 」
柴田望

~まどろまぬかべにも人をみつるかなまさしからなん春の夜の夢 (後撰和歌集巻第九 恋歌一)
 
講演の直前、K先生が私を呼び
「すごい発見をしたよ!」
ぎっしり文字の詰まったノートに
〈古語「壁」=「塗る」・「寝る」=「夢」〉
「壁」は夢の総称
安部公房は伝統を拒絶しながら
和歌の古語を手法に活かした(仮説?)
   
「箱」や「棒」という言葉も
かつての日本人なら当然に理解していた 
重層的な意味が潜む
小説の主人公に境遇をもたらす
 
走り書きに辺境は潜む 
スマホのカメラで畏怖は撮れない
壁を捲る 口ずさむ縄跳びの作法
蝶結びのコツ 指先まで届く血は
ご先祖の働きに触れる
かつて咲き誇った庭の残影
かつては当たり前だった古い造りだ
 
新しい世代の家も
事故やクレーム、災害から学んだ
(危険)は(安全) 両極を前提にしている
《反リアリズム》の手法とは
《本当のリアリズム》の追究
 
あのときの輝く瞳…
6月のチラシを刷り、街じゅうに配って
最前列で先生の言葉を
耳で書きなぐり、講義録をまとめた
「日本語を紐解けば、〈壁〉にはアホ、愚か者、
そのような意味もある…」
覆る壁に沿った愚かさを恥じ 
名前に逃げられても
日常の《変形》を誘う声
どんな碑よりも高く導く
*
(詩誌「フラジャイル」第7号 2019年12月24日)

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