詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「蒼原」105(2020・新年 蒼原の会)

■1月に戴いておりました、詩誌「蒼原」105(2020・新年 蒼原の会)をようやく拝読させて戴きました。誠にありがとうございます。

 山内みゆきさんの「本と映像の日々・24」、映画「全身小説家」(原一男監督)のこと、井上荒野「あちらにいる鬼」のこと興味深く拝読。井上光晴の「救済力を持つカリスマ的素質」について。1970年代、旭川にも「風化しない思想の根拠地」文学伝習所が開かれ、井上光晴がやってきたとき、文芸評論家の高野斗志美先生、「青芽」の詩人・文梨政幸さんもその場にいました。「井上光晴は不思議な雰囲気の女性を見かけるとすぐに一緒にどこかへ行ってしまう…(笑)」と、高野先生が仰っていた。修羅場だらけの時代を生きた小説家の凄み。高橋順子詩集「海へ」「夫・車谷長吉へ」のことも書かれており、昨年11月の北海道詩人協会「北の詩祭」で菅原みえ子さんが朗読された「時の雨」「赤目四十八瀧心中未遂」「遍路笠をかぶって」、長吉、順子の愛の物語、憶いだしました。

 松岡真弓さんの「いつか消える」、「晩秋の空に・他」の連作、味わい深く、儚いもの、永遠に保存できないものが過ぎ去る様子を見事にとらえる。すべての証明は永遠に続かないことの証なのか。「馴れ合いを許さない」和音を、「ささやかで/見えにくい/あなたの優しさ」を、「永遠に羽化しない/私の抜け殻」を「一枚ずつ/葉を落とすように」手放す。何にしがみつくか、何を手放すか、何に目を向けて、何に背を向けるかで人生に現れる景色も、人生から消える景色も、大きく変わる。片方を知るからこそ、もう片方を発見できるのか。「あと少し/消えずにいたいと思ってしまう/いつか消える風景が/美しくて」。

f:id:loureeds:20200315231737j:plain