詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■越路美代子さんの詩集『あしあとの海辺』(2019年11月 文化企画アオサギ)

■佐相憲一さんが編集され、文化企画アオサギより発行された越路美代子さんの詩集『あしあとの海辺』(2019年11月 アオサギ文化企画)を御恵送戴きました。心より感謝申し上げます。
http://aosagipoem.main.jp/archives/1004
 越路美代子さんは前述した伊藤桂一氏に師事した詩人。佐相によると「その詩人の名を聞くと、思い浮かぶのは、風とみどりと水、あるいは人の心の伸びやかで柔軟なひろがり」。「本当の意味で国際的、地球的な感覚と、いい意味で古風な繊細さとが作品世界に同居している。」。
 詩集は「出逢う」「悼む」「みつめる」の三章構成。ドイツやフランスに滞在されていた情景が豊かにえがかれた味わい深い第一章の「至る夏」、「旅の秋」、「記憶と現在(いま)」、体験されたときの光や温度、イメージが醸成される。「はは」に捧げられた第二章「悼む」の「垣根ごしにそそがれる水が」、「水って ね」、水に詩精が宿る。悼む心が水に記憶されていく。「〈水って ね/いつまで見ていても/つかれることが ない〉」。ため息のでる「はは」の台詞。見ていて疲れるものにこの世界は溢れている。人体の70%は水でできている。水は感情を受信する。美しい言語や音楽に反応して美しい結晶を生じると書いた江本勝氏の『水からの伝言』という写真集が、科学的根拠に疑問はあるけれども世界じゅうで翻訳され、それをファンタジーと分かっていても水の神秘への注視により想像力を喚起された多くの読者によって支持された。人々は水に癒され、惹かれる。「〈いつまで見ていても 水って/つかれを知らないよ〉」「水の匂いのする/地球(ほし)に 抱かれ/ヒトという宇宙の だいじな仲間です」。

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