詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■濱野通榮『ユニッ人の脳みそラッパ―ユニッ歌ユニッ記 ユニッ知―』(文化企画アオサギ・2019年12月31日)

■ある意味ポストモダン的とも言える多ジャンル詩歌文集、濱野通榮氏の御本『ユニッ人の脳みそラッパ―ユニッ歌ユニッ記 ユニッ知―』(アオサギ文化企画・2019年12月31日)を拝読させて戴きました。
http://aosagipoem.main.jp/archives/1023
現代は難しい多様性不確実性の時代なので、現代を表現する芸術も当然に多様な構造を帯びてくるものと思われます。散文、詩、定型詩歌句、ジャンルを変えてもどれも不思議と同じ作者の手によるものであることが伝わる。書くことへ向かう真摯な姿勢が通底されている。冒頭の「田端藝術家文士村のうた」「田端藝術家文士村惜寂のうた」が興味深く、かつては先進の文化発信地であり、明治から昭和の空襲で焼かれ、さらに復興されるまでの、田端(旧東京府豊島郡瀧野川村大字田端)の様々な文士たちの活躍が刻まれる稀有な試み。資料としても貴重な叙事詩。勉強させて戴きました。
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紅緑暖炉に水木も燃えて (佐藤紅緑 水木伸一 カフェ紅緑)
恋の草花朔太郎 (萩原朔太郎 草花=水木の作品)
愛の誓を松太郎 (佐々木愛 川口松太郎
結て操を専太郎 (田邊操 岩田専太郎
外界には時雨情深深 (長谷川時雨 野口雨情)
我鬼窟独座は芥川 (芥川龍之介
内心時雨に情沈沈 (芥川は「時雨」が好きであった。詩・俳句・短歌創作)

(濱野通榮「田端藝術家文士村のうた」〈四、初冬 時雨の夜景 心の歌〉より)

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