詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「Ultra Bards」33号(七月堂 2020年4月10日)

■詩誌「Ultra Bards」33号(七月堂 2020年4月10日)を拝受致しました。心より感謝申し上げます。

 「袂を分かってからも相変わらず同じたぐいの本を読んでいる私たち」、鏡に映し出したかのような美しい対称三角形の阿部日奈子氏の「影身」に驚き、他人とは自分の鏡であるという確信、毒づきながらも「君」を尊重する愛おしさ。まるでエッシャーのだまし絵のようだなと思いつつ拝読しておりましたら、なんと、森山恵氏の御作品「なく音なるらむ」に「エッシャーの終わりのない階段」が登場!「アライさん家」の建築はペンローズの階段のようであり、巻貝の内部のようなのでしょうか。廻廊は「生物のかかわるまえの鉱物の 置かれるところ」であり、無機物と有機物の間、「子も産まず廻廊をめぐりめぐり」しかし産まれようとしているのでしょうか、「そして産む/ぬばたまの月夜に/これから地上をさまようように」地上もまた廻廊。詩の終わりに「恋ひわぶる 人のかたみと 手ならせば」の源氏物語歌。踏んだり蹴ったりの人生でも、雑草を掴んで這い上がる。

 細田傳造さんの片仮名歴史上人名の御作品「タイラノマサカド」、「俺」は「朕」、馬はカワサキKH400。将門の故郷、茨城県下(「来るな」と声が聴こえる)を疾走し、憑依一体化していく。胴塚のある利根川には「もう蜆(しじみ)は住んでいない/川には愛がないのだ」という。愛がないと光は狂い、「臨界の皇王」が玉座につく。我々は祟りを恐れるしかない。「サカモトリョウマ」、七条新地は宿屋「扇岩」の地、お龍さんが伏見の寺田屋に移る前に働いていた。キンダーガルテンは幼稚園(ドイツ語)、新型コロナウイルス非常事態で幼稚園は休園、学校の授業はオンライン、先生たちはiPad Proの美しいディスプレイ(12.9インチ)。「この国の将来の事を考えて」、いますべきことを龍馬に聞きたい。

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