詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「雨傘」vol.8【たずねる 特集】(2020年5月1日 発行所:詩の練習)

■「雨傘」vol.8【たずねる 特集】(2020年5月1日 発行所:詩の練習)をご恵贈戴き、拝読させて戴きました。心より感謝申し上げます。

 ジャッキー・マクシーの透き通るヴォーカル。フォークロックの枠にとどまらない幻想的なペンダングルの音源を聴きながら杉中昌樹さんの詩作品「たずねる」の裁きを受ける。レーニン体制の検閲官により、獄中で書かれたサドの著書は、ラテン語聖霊による囁きは、すべての表現物は精査される。反省の足りない俳優が会見で粛清される。太古から人間は裁く生き物。リング上で行われるパフォーマンス。政治の終わりと詩の比喩について。「この箇所が意味するものは何か」の問いに対する代償は満場の笑い。

 坂多瑩子さんの「やってくるもの」。人生を変えるのは習慣であると多くのビジネス書が語る。何気なく毎日やっていることの集積が、人生のすべてになってしまう。「同じ手順で/くりかえされる動きのなかの/時々の/息苦しさ」が息苦しいということは恐ろしいことだ。ナナとシンスケはチャイルド? それともインナーチャイルド? 『ナナ』の作者エミール・ゾラのショートセレクションの絵はヨシタケシンスケ氏?(『ゾラ ショートセレクション 猫の楽園』理論社 2018年04月)。子どもを侮ると怪我する。「へたるな/わたし」。「くりかえされる動き」は習慣。はみだすのも習癖。「習癖に/明るく笑うしかなく」。この詩でも想定の内と外を遮る閉塞に笑いが通路を拓く。

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