詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

「木偶」114号(2020年 5月15日 『木偶』編集室)

■「木偶」114号(2020年 5月15日 『木偶』編集室)を拝読させて戴きました。御恵送賜り、心より感謝申し上げます。
 勝島啓太氏の「現代妖怪シリーズ「トイレの花子さん」」、何故か途切れることなく伝承される日本の代表的都市伝説。最近はあいだいろ氏による『地縛少年花子くん』が漫画もアニメも子どもたちの間でかなり人気であり、バリエーションも豊富。学校のトイレから、タナカくんの家→ぼくの家へ遷移、伝染、あるいは拡散の比喩。脳は像を送受信する。「花子ちゃん 別にトイレにいるだけで何もしないスよ」非現実は現実に、非常事態は常態に変わる。
 野澤睦子氏の「斜光物語」、文ではなく短い詩句の連なりに与えられる雫のような句点の「。」がキラキラと眩しい。「消えない明かり。止まらない点滴。一粒ずつ。流しつづける。言葉。交わらない。切断する管。血のすじ。降りしきる。無数の種。」斜めから射されることによって、明るみになる、命が与えられる。閉じ込められたものどうしの連なり。クモの巣状の光回線の広がりを斜めに切られ、浮かぶ時の断面。「さざめく。風。孕み。昇る。斜光には果て。」…果てがあるのだという。だからこそ一粒一粒眩しい。
 「レジオンドヌール勲章では何も許されない。好ましいのは肉屋のロゼットだ」田中健太郎氏が訳された「ローマには通じない道 絶対自由主義者の考察と箴言(五)抵抗すること(二)」。ジョルジュ・ブラッサンスの名前を久しぶりに拝見。セルジュ・ゲンスブールにも影響を与えたフランスの国民的歌手、詩人、映画俳優、小説家。「民衆のために、民衆の言葉遣いで歌う。民衆はその言葉で生き、胸に抱いている。」ネットで検索していると、なんと、すべての自作詞の翻訳が掲載されている「ジョルジュ・ブラッサンス全集」というページを発見しました。
https://www1.gifu-u.ac.jp/~frjp/bases/brassensjp/…/index.htm
これらの歌詞や小説といった創作の核の部分に、この箴言の魂・心意気があったのかと興味深く拝読。自ら考える機会を奪われつつある現代の私たちに対して向けられているよう。「私の無政府主義個人主義は、自由な思考を守るための戦いだ。なんらかの集団に決められることはご免だ。」。

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