詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■旭川詩人クラブの「詩めーる旭川」第18集(2020年11月1日)

旭川詩人クラブの「詩めーる旭川」、舟橋正弘さんが編集された第18集(2020年11月1日)が届きました。新型コロナのために旭川文学資料館での詩画展が中止となってしまいましたが、あとがきに書かれてありますように「アンソロジー(詞華集)にふさわしい詩集となった」、皆様の御作品、エッセイを拝読させて戴き、再会の喜び、心より感謝申し上げます。
 拙作詩「壁ー「響き」」とエッセイを寄稿致しております。随分前の作品です。このところ何かと忙しくて、数カ月くらい詩も論も、まともな文章は何も書けなくなってしまいました。このまま一生何も書けなくてもいいやという気も致しております。来年以降は様々な詩誌への参加は免除させて戴き、「フラジャイル」の編集作業に専念したいと考えております。自作へのこだわりは一切ありません。詩も創作もやめたい。無私でありたい。裏方が向いています。でも「小樽詩話会」でだけは書き続けたい。旭川詩人クラブの会報に、大変恐縮ながら小樽で暮らしていたときの想い出を書かせて戴きました。本当にあったことです。当時恵まれていたことに、今更ながら気づかされ、感謝しています。少なくとも「私」という狭い世界の中では、リアルな…初めての、とても不思議な(心霊的?)体験でした^^

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壁 ―「響き」    柴田望

潮見台(sio-mi-dai)一丁目
小さな山の頂上の三角屋根
駐車場から家までの細い坂を歩きました  
内装は綺麗でした
一緒に暮らしていた人は
なぜか二階で眠りました
二階はひと部屋でした
仕事が忙しすぎて
一緒に暮らしていた人の
眠る姿を見たことはありませんでした
二人で居間で聴きました
壁の向こう
どかどかと階段を駆け上がる音
息を潜めて聴きました
やがて音は引きました 
鼠ではないとのことでした
「あぁ、たまに居るの」
一緒に暮らしていた人の
つぶやきは甘美でした
次の日、家全体が
壁もガラスも揺れました
地震ではありませんでした
「あぁ、たまに来るの」
一緒に暮らしていた人と
しばらく一緒に揺れました
若い夫婦は幸せでした
外へ出ると家の中以外
どこも揺れてはいない
異様に晴れていました
一緒に暮らしていた人が
大切に育てた庭でした
街全体が眩しくて
夕日がとても綺麗でした
本当はそれは朝日でした

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