詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■壁 ―「儀式」     柴田望

■壁 ―「儀式」     柴田望

 

医療

優秀な

医師たち

つぎつぎと

病院を開業し

数年の後たたむ

この村には不要だ

医師の夫を裏切る妻

夢と現実の相剋に悩む

黄色の印象を与えたくて

サランボー』を執筆した

わらじ虫がうようよする片隅

あの黴の色みたいな感じを求め

精緻な客観描写、自由間接話法を

多用した細かな心理描写、多視点的

な構成、ヌーヴォー・ロマンの先駆け

主人公は美しいエマでも、騙された医師

シャルル・ボヴァリーでもベルタでもなく

繰り返されるエマの不貞と重ねられる借金癖

エマの死後シャルルが机からようやく見つける

恋文たち、崇拝する聖女ではなかった饗宴の証拠

ぞくぞくさせる、読者を堕落させるほどの狂的情熱

公衆の道徳および宗教に対する侮辱罪、で告訴された

ボードレールは好意的な評を書いた、エマはほとんど男

著者はおそらく無意識のうちに、男性的な資質で主人公を

飾ったのだ…エマに作者自身が投影されていることを見抜く

この小説の主人公は誰? すべてを見て知り尽くしていた人物

ヨンヴィル村に医師がやって来るたびにあらゆる手段で追いだし

薬屋を繁盛させた、村の医療に貢献し、新聞記者まで味方につけた

家の庭に勲章の星印をかたどった芝生を作らせて、その真ん中で眠り

良い気分で夢に浸った、目標をすでに手に入れていると生き生きと感じ

祈り、感謝し、引き寄せて、ふと忘れた頃に、受け取ることができる奇蹟

宇宙の法則を用いた薬剤師オメーに『レジオン・ドヌール』勲章が贈られた

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