詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

壁 ―「彡」 ―現代詩手帖2020年11月号 特集・岡田隆彦を読む 「帷子 耀.「黒乃赤鉛筆/a円/B面」」を読んで

柴田望

壁 ―「彡」
現代詩手帖2020年11月号 特集・岡田隆彦を読む
「帷子 耀.「黒乃赤鉛筆/a円/B面」」を読んで

 


象形
心臓の
本体と管
本体のムが
ホチキス針の
ごとく床に散る
感嘆符は変遷する
千の道を説くがいい
遺された動脈、大動脈
血のつながる海の赤鉛筆
どうしてお前の海は赤い?
ゴッホゴーギャンに訊ねる
アルルの町、青鉛筆の二梃拳銃
虚空をあおいで長嘆息の日々続く
一週間以上も書いては破り捨て……、
ここまでがA面、エイメン、永遠a円
海のさんずい、涙の、汝のあなたにある
本体(ム)を失い遺された心臓はさんずい
さんづくり三つ離れ離れに切れ切れに届いた
実はまだa円? サタニック・マジェスタ―ズ
一つ一つ確かめながら「魔王讃歌(二部)」聴く
主旋律の一つであるその証の吃音、象徴の黒縁登場
左右対称「、、、、、、」汝の涙のさんずいのパーツ
一人の署名、一つの虹、好きな孤独を持って行くがいい
「喧嘩仁義(ごろめんつう)は省かせてもらうぜ」に倣い
康熙字典の部首分類に従って、「さんずい」は「水」の4画
冥はくらくなるので嫌い、アカルクシテ、モウヨルハアケナイ
いつの間にかB面? アキタンダ ドウカワルッテイウノ 涙乃
『根源乃手』と書名にも用いられ吉増作品に頻出するすべての「乃」
アフレカタ、ワルイコドク、東日本大震災がもたらした一つの格助詞
書くことの困難とともにさまよいつづけ、宇宙にまで海を通わせている
血乃赤、宇宙乃黒、眩冥と群影の韻、ジュリアン・ソレルの葬送に連なる
マチルドの涙が波を消してゆく、あふれるぞ、豊かな髪の流れるさまの象形

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