詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■第34回旭川詩人クラブ詩画展

■第34回旭川詩人クラブ詩画展が旭川市3条15丁目820‐1銀ビル1階の「みんなのカフェ」さんにて開催されています。入場無料、日曜・祝日がお休み、感染予防対策のため明日よりしばらく閉店になるようですが、偶然、本日少しだけ観ることができました。
 旭川詩人クラブもなかなか集まることができなくなってしまい、皆様の御作品からお顔を想起致しておりました。活字ではない字も絵も肉筆が多く、詩人お一人お一人の想いが伝わってきます。いつもの旭川文学資料館ではなく、詩がこうして街へ、これからもインターネットの活用など表現方法を考えて運営していかなければならないのでしょうか。市民の取り組みの多様化の機会ととらえ、前向きに行われますことを願いつつ、皆様の作品の写真をアップさせて戴きます。
 柴田の作品としては杉中昌樹さんのペーパー「詩の練習」に寄稿させて戴きました「壁―振り子」を、歴史ある銀ビルの壁に掲示して戴いております。搬入にも参加できず、誠に申し訳ございません、木暮純さん、舟橋さん、皆様誠にありがとうございます。
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壁  ―「振り子」  
柴田望
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部屋はがらんとしている
三人の子どもが壁に静かにクギをうつ
鉄の玉が先についた紐をくくりつける
動いているのに止まって見える
振り子で壁全体を揺らす
一つ目の振り子は二つの振り子を揺らす
二つの振り子は四つの振り子を揺らす
四つの振り子は八つの振り子を揺らす
振り子はロサンゼルスのワッツタワーよりも高くそびえる
偉い人がさらに偉い人に
さらに偉い人が一番偉い人に
ほめてもらうための(だましあいの)ゲームのよう
小さな振り子は大きな振り子にだまされて
大きな振り子に投票する
一つの家族は大きな振り子を構成する
小さな振り子にすぎないと悟る
憶えていなさい 与えた力はそのまま返る
一つ一つ 受けた力をそのまま返す
揺れるたびに忘れるために
書いたものを永久に残さないために
文字があるということは 声があるということは
手触りがあるということは
痛みがあるということは 血がでるということは
光があるということは 揺れている証拠である
震えている証拠である 止まっている証拠である
字も 森も 道も 地平も 揺れている線の波動である
あることが起こるたび
壁と 壁に増え続ける振り子の三角形と
三人の子どもは絵になる 絵は一見止まって見える
震えていなければ 色は見えない
でも、色や形や大きさは
問題じゃない こわがらなくていいよとゆるすために
おそろしくて目をそらしたくなる奥底の 芯のために
うれしいに揺れたとき かなしいにもどるために
くるしいに傾いたとき たのしいにもどるために
三人の子どもが壁に静かにクギをうつ
神様、どうかこの子たちを
決して書かれることのない静かな経験からお護りください
お父さんがお母さんをどなる
お母さんがお父さんをどなる
声が消えるために フィクションでありますように
一つ目の振り子は二つの振り子を鳴らす
二つの振り子は四つの振り子を鳴らす
四つの振り子は八つの振り子を鳴らす
私たちが生まれた日 うれしかった日のことを
どうか笑顔で具象的に 大きな振り子に逆らい
お父さんとお母さんに憶いだしてもらうために
トム・ブキャナンがデイジーにたのしかった想い出を語る
部屋はがらんとしている デイジーの心は揺れる
休むことなく震えている

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