■「小樽詩話会」会報No.632(2020年12月 小樽詩話会)
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壁 ―一枚の葉
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「お前の怒りはその程度、《私利私欲》のものだ
本物の怒りはそんなもんじゃない
大地を揺らす、《世のため人のため》の怒りだ」
「虎は所詮動物、蛮勇は勇気ではない
武士の強さはそんなもんじゃない」
「怖いものの怖さを知り
命を大切にいたわり
真の死に場所を得る」
死を恐れなかった武蔵が初めて
生きたいと願い、命乞いする
沢庵和尚は許さない
一枚の葉にとらわれるのをやめたとき
百千の葉を心は見る
自分のために怒っていては、周りの怒りが見えない
だから人を守れない 自分さえ守れないと悟る
怒りを手放したとき
沢庵がわざと目をはなした隙に
お通が武蔵を解き放つ
もう武蔵は虎ではない