詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■三浦志郎詩集『時の使者』(文化企画アオサギ 2020.12.15.)

■発行されたばかりの三浦志郎詩集『時の使者』(文化企画アオサギ 2020.12.15.)を拝読、ロバート・キャパによる[丸刈りにされ引き回される仏女性]の写真から、壮大に物語が紐解かれる「橋」という長編詩が非常に読みごたえがあり、心奪われました。マルグリット・デュラスの『ヒロシマ・モナムール(24時間の情事)』やモニカ・ベルッチ主演の映画『マレーナ』等を想起しつつ、時代によって力を持つ側が転換される、価値観の急激な変化を、人類は何度も経験し、戦勝国側の文化や言語に染められてきた。私たちは何を学ばなければならないのか。
 毎日、感染者数が報告されます。感染された方の人権を守る取り組み等を真剣に考えなければならない。感染者を必死で受け入れている病院の医療従事者や入院患者までが、偏見や差別の視線にさらされている。今は正しいように思えても、誤りであったと気づくことの繰り返しが人類の歴史。感染された方を差別するような風潮は、幼稚な誤り、原始的な迷信であったと、将来面白おかしく戯画化されます。詩に何ができるか?
 むしろ全員が感染しているという可能性を前提に、力を合わせて世界を救わなければならない。価値観が転換される時代の節目における文学の想像力について、深く考えるきっかけを戴きました。心より感謝申し上げます。

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