詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■壁 (エキストラ) 柴田望 #「詩のまち旭川」をコロナから取り戻す

#「詩のまち旭川」をコロナから取り戻す
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柴田望
壁 (エキストラ)
 
 
と鬼
感染者
非感染者
問い合わせ
役所に殺到し
名前を聞く市民
感染者の家の壁に
天誅卵を投げつける
赤鬼は孤独だったので
村人とのふれあいを求め
お菓子もお茶もございます
看板を読む村人きみのセリフ
お菓子も…お茶もあるんだぞ…
この間まで両手に収まる程だった
きみがりっぱな小学二年に成長して
学芸発表体育館のステージ中央に立つ
人と鬼、あの世とこの世、無知と未知数
境界へ遣わされしセリフ一行のエキストラ
千葉泰樹監督の映画「義人呉鳳」の如き風格
わざと悪を演じ村を追放される青鬼の厚き友情
朱衣紅巾のいでたちで首を差しだす呉鳳の伝説を
なぜ小学生に紙芝居で何度も読み聞かせしたのか?
原住民に対するレイシズムを助長し、尊厳を傷つけた
病院で働く人のお子さんを保育園に預けないでください
すると看護師は不足し現場は逼迫…支援を呼ぶにも判断は
遅く政治への不信何に寄り添う情報が飛沫のように拡散され
病院に自衛隊が派遣される街のGoToキャンペーンは継続する
青鬼の犯罪はフェイクだ赤鬼を正義の英雄にするプロパガンダ
市民は普段通り暮らすスーパーや大型書店は混んでいる映画館も列
学校行事は密を避け無観客で行われ撮影されたDVD販売配布される
大人と子ども観ると観られる人と鬼認める手帳の有無生と死光と闇国境
越える卵の投げつけられた落書きの壁を想う感染した側としていない側の
差異がだんだん希薄になり脅迫めいた人数の実存自粛要請不要不急の彼岸で
「お菓子も…お茶もあるんだぞ…」恐る恐る鬼の棲家を覗く村人をよく演じた
自己犠牲の日本の指導要領きみはもう中学受験なのか!英語を習っているのか!

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