詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「指名手配」第2号(文化企画アオサギ)

■詩誌「指名手配」第2号(文化企画アオサギ)が、届きました。錚々たる全国の眩しき書き手の皆様の中、恐縮ながら末席に加えて戴いております。お写真の通り、大変インパクトのある表紙・装丁。吸い込まれそうであります。
今回柴田は、毎年ノーベル文学賞候補に挙がる中国の作家、閻連科氏が「この文章は中国では発表できないし、香港でも一定の危険が伴う。《中国の最近のいびつな愛国主義民族主義》は非常に恐ろしい」として、2020年5月11日(月)の北海道新聞朝刊に寄稿した手記にインスパイアされ…詩「楯ー「集中」」を書き、60ページに掲載戴いております。
「彼らがうそをついていることを私たちは知っている。彼らも自らのうそがばれていることを知っている。しかし今日、誰かがうそをついているのに、私たちは誰がうそをついているのか分からなくなった。」(5/11北海道新聞「閻氏手記」)
「楯ー「集中」」は単純なストーリーで、敵の虚を突くやり方で連戦連勝する、謎の選挙コンサルタント。当局に睨まれ殺されるが、じつは存在自体がフェイクである…「わっはっは先生」。架空のドキュメンタリー映画
なぜ多くの人に嫌われているはずの候補者が票を集めるのか?「脳は似た周波数へ振幅を変える」…彼らはエネルギーを集めた(集中)。「反戦集会には行かない。平和集会に行く」(マザー・テレサ)。「敵を攻撃することで敵を強くしてしまう逆説の構造を廃し/全人類の願いに集中する」(「楯ー「集中」)
三行目「✕✕✕✕✕✕✕✕」を知られると当局はまずい。トップシークレット。「わっはっは先生」はこの手法で勝つ。(時が来れば、明らかにさせて戴きます)。「わっはっは先生」を指名手配する組織によって伏せ字にされた…大好きなジョージ・オーウェルマーガレット・アトウッドの統制された世界観、小熊秀雄にも伏せ字の入った作品があり、いつか使いたいと思っておりました。
このような不完全な詩行の掲載をお許し戴けましたことの驚き、それは、私たち同人詩人を「容疑者」と呼び、「指名手配」してくださった(編集後記はなんと「取調室」!)、豊かな遊び心と、涯てしない比喩の達人である詩人・佐相憲一さんが、私の拙い想像力を励ましてくださったこと存じ、限りなく恐縮致しております。
「改正案が通れば司法の独立がなくなり、香港で捕まった人は中国政府の思うままに裁かれてしまいます」…周庭氏が禁錮10カ月の実刑判決を受け、「言論・報道の自由」も風前の灯であることが歴史に刻印された今年の今月、2020年12月に発行された「指名手配」第2号にこの作品を掲載戴きましたことを、感謝申し上げます。
「人々は一つの文章が削除された後にまた数十種類の言語や符合、隠語で翻訳し直されたものを見ることができる。不当なことを言った女(都市封鎖された武漢市の感染状況や当局の初動への批判をつづった日記をネットで公開した作家)をたたきのめそうと呼び掛ける人もいる。これらはこの世で起きようもない寄行と思えるかもしれないが、巨大かつ複雑な中国ではかくも日常かつ正常に起きている。」(5/11北海道新聞「閻氏手記」)
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■詩誌「指名手配」第2号
容疑者詩人
井嶋りゅう、遠藤ヒツジ、奥ノ矢真弓、勝嶋啓太、熊谷直樹、GOKU、小篠真琴、佐相憲一、佐藤克哉、柴田望、立原一洋、
マイケル・シャワティ、ミカヅキカゲリ、吉峯芙美子、
若宮明彦
表紙絵・奥ノ矢真弓/装丁デザイン・ミカヅキカゲリ
編集発行人・佐相憲一
定価 500円+税
文化企画アオサギのホームページはこちら

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