詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「小樽詩話会」第633号(2021年2月5日発行) 「壁 ―「儀式」」 柴田望

■「小樽詩話会」第633号(2021年2月5日発行)
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「壁 ―「儀式」」  柴田望

 

医療

優秀な

医師たち

つぎつぎと

病院を開業し

数年の後たたむ

この村には不要な

医師の夫を裏切る妻

夢と現実の相剋へ沈む

黄色の印象を与えたくて

サランボー』を執筆した

わらじ虫がうようよする片隅

《黴の色みたいな感じ》を啓発

精緻な客観描写、自由間接話法を

多用した細かな心理描写、多視点的

な構成、ヌーヴォー・ロマンの先駆け

主人公は美しい夫人でも、騙された医師

シャルル・ボヴァリーでもベルタでもなく

繰り返される不貞と重ねられる借金の揺らぎ

エマの死後、シャルルは勇気を奮い抽斗を暴く

恋文を読む崇拝する聖女ではなかった饗宴の証拠

ぞくぞくさせる、読者を堕落させるほどの狂的情熱

公衆の道徳および宗教に対する侮辱罪などで告訴され

ボードレールは好意的な評を書いた、エマはほとんど男

著者はおそらく無意識のうちに、男性的な資質で主人公を

飾った…つまり作者自身の投影を見抜く小説の主人公は誰?

ヨンヴィル村に医師がやって来るたびあらゆる手段で追いだし

薬屋を繁盛させ、村の医療に貢献し、新聞記者すら味方につけた

家の庭に勲章の星印をかたどった芝生を作らせて、その中心で眠り

良い波動で夢に浸り、目標をすでに手に入れていると生き生きと信じ

祈り、感謝し、引き寄せて、ふと忘れかけた刹那無意識に奇蹟が降りて

宇宙の法則に身を捧げし薬剤師オメーにレジオン・ドヌール勲章を授ける

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