■詩誌「錨地」同人、北嶋秀明さんより、新詩集『落葉の歌』(2021年5月2日発行 私家版)を戴きました。心より感謝申し上げます。御出版おめでとうございます!!
あとがきに「私は生命というもの、人間のものだけでは無い生命、土や水や空気などを含め全ての物が宿している生命があたかも呼吸をしている。それをみつめ、その奥にある何かをじっとみつめ、その結果として人間の持つ喜怒哀楽や寂しさ、はかなさのようなものをさりげなく結びついて行かないものかと思いつつ、詩を書きたい」という明確な姿勢を打ち出されている。こうした生きるものへのまなざし、バラードのごとく深く優しい詩篇群に、魂の深呼吸をさせて戴いた思いです。
五連構成の作品が多く、最後の行には句点が付く。四季に詩想が溶け込んでいくような前半の作品群、「海霧」は波の音が聴こえてくるよう。比較的短い構成の「晩秋」の美しさに息を呑む。全文を引かせて戴きます。
*
絶叫のような夕焼。
夜が昼にとけだし
昼と夜が まざりあった
グラデーションの燃える空が
海の上に広がっている。
その空の奥
たちこめる漆黒の闇の
さらなる奥
みえない明日にむかって
一線(ひとすじ)に連なり
島が 南へ渡っていった。
(「晩秋」 北嶋秀明)
後半、草の葉の露に着眼した「朝の宝石」。続いて「雪虫」、駆除される野性の鹿の生命のけだかさを讃える「銃撃」、「白鳥」、カラスのこと(「鴉」、「みせしめ」)、「ある魚の場合」と「人間のものだけでは無い生命」を幻出させ、それを視つめる空気や動物の視点をも読者と共有する詩人の行為に、深い共感を覚えました。