詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

小笠原鳥類詩集『アンソロジー海老ブレイクスルー2009~2020』(阿吽塾 2021年3月25日)

■「ラジオは、黒い、なまこの、一種である。」(「なまこ俳句の群れ」)。阿吽塾より、現代の日本に、このサイズとこのデザインで顕現された小笠原鳥類詩集『アンソロジー海老ブレイクスルー2009~2020』(阿吽塾 2021年3月25日)の完璧な各ページの行間にすっかり吸い込まれています。白い変形A5版は詩行を屹立させる。魚の、きのこの、毒キノコの俳句の行間に溢れる宇宙、ラテン語の野鳥、たなかあきみつ詩集『静かなるもののざわめき』(七月堂)の動物(懐紙シリーズでは『吉岡実全詩集』の動物たち)に内在されるモンスター性の煌き。後半の「書物を並べると出現する、幻の、あの人ーボルヘス点描ー」では、『ボルヘスコレクション』(国書刊行会)が登場。旭川市神楽図書館に全巻揃っていて、いつかじっくり読みたい、そんな時間はないなぁと憧れていた書物(6冊だと思っていました^_^)。ポーの「大鴉」について、「創作の一つひとつの過程を分析している(あるいは分析するふりをしてみせている)。」「何を書くにせよ、すべては最後の一行を念頭に置いて書かれねばならぬとポーは考えていた。」という本質的な箇所が抜き出されていて、創元推理文庫の『ポオ 詩と詩論』(1979年 福永武彦他訳)という伝説の凄い一冊についても触れられている。高校の時古書店で見つけた文庫をひっぱり出して、並べて写真を撮ってみました☆ 「鴉」は153ページです。「never more」は「最早ない!」とかいう訳になっています。詩論は「構成の原理」、「詩の原理」、「ユリイカ」も読めます。最後の一行に向かって、読み直したいと思います。ルー・リードの『The Raven』(2枚組輸入盤 2003年)を聴きながら。

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