詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

詩誌「ZERO」No.45(「ZERO」の会 2021年1月31日)

■今年戴いておりました詩誌「ZERO」No.45(「ZERO」の会 2021年1月31日)を、ようやくじっくり読ませて戴きました。誠にありがとうございます!! 尊敬するお二人、森れいさん、綾部清隆さんが一篇ずつ発表される「ZERO」の詩世界。
 綾部清隆さんの詩篇「だれ って」、「だれでしょう/知っている ひと/知らないかた」…詩にこめられた一つの疑問を何故新鮮に感じるのか。すれ違う人が「だれ」なのか、分からないことが当然である匿名の世界で、日常の小さな変化がだれの仕業かということにすら興味を持てなくなっていた感性の病に気づかせて戴きました。「だれだっていいじゃない/それはそうだが/ちょっと気になる」…そのちょっとした疑問から、物語や風景が広がっていく。オンラインのニュー・ノーマルに奪われつつある人と人との関りが結ばれていく。
 森れいさんの詩篇「風の望楼」、「書く」ことについての厳しくて真摯な問いに詩人は向き合う。「書く」とは何か。「森の奥で羽化をくりかえす/言の葉の/おぞましく美しい変化(へんげ)/を紙の上にとどめる所作は/いつも手痛いかえりうちにあう」…「いつも手痛いかえりうちにあう」という一行に世界がぐらつくような感動を覚えました。果たして自分はこんなに真摯に「書くこと」に向き合っているだろうか。ラジオの普及以降、電子波形と化した音楽の「絶対音感をゆるがす」ような詩を、「羅針盤を狂わす周波」で書いてみたい、そんな夢を追って「望楼の切っ先」に立ち、「雫」に映る風の流浪の景色に憧れています。

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