詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「指名手配」第3号(2021年夏 編集発行人・佐相憲一氏 発行所・文化企画アオサギ)

■詩誌「指名手配」第3号(2021年夏 編集発行人・佐相憲一氏 発行所・文化企画アオサギ)が発行されました。佐相憲一さんの詩論、GOKUさん、吉峯芙美子さん、若宮明彦さん、遠藤ヒツジさん、佐相憲一さんのエッセイ、新たな同人あおい満月さん、井上摩耶さんが加わられた全国の気鋭の16名の詩人による、それぞれに時代に対峙された凄まじい詩作品。どの作品も魅力的で、後日感想をアップさせて戴きます。その一人一人の詩人の経歴や活躍なども収められた見事な編集。美しき装丁。表紙をめくると「供述調書」として、現代の情況における詩の時間のアリバイが記されています。
 恐縮ながら柴田も同人末席に加えて戴き、今年2月9日に逝去された、川村兼一さん(100年以上の歴史を持つアイヌ民族の私設資料館「川村カ子(ネ)トアイヌ記念館」(北海道旭川市)館長)のこと、2018年にまちなかぶんか小屋で拝聴した講演について書いた詩篇を、この「指名手配」第3号(14ページ)に掲載戴いております。4月17日、コロナ感染予防の厳重な体制で行われた恵庭市「in未来日記」のイベントで朗読したものです。

「壁-川村兼一さんへ」in未来日記・恵庭 2021年4月17日
https://youtu.be/tGjtY-wN41s

「 壁 」  ー川村兼一さんへ
*

ベンジャミン・フランクリンはドーズ法で
インディアンから土地を奪った
アリゾナニューメキシコ
リザベーションに押し込めた
新渡戸稲造とホーレス・ケプロン
ドーズ法を応用した
言葉も宗教も同化すれば滅ぼせる
結婚式も葬式もイオマンテも禁じられた

新渡戸稲造の「植民政策学」、アイヌと同じようにすれば
朝鮮、韓国、中国、台湾も
植民地にできると北大で教えた

天然痘菌だらけの毛布で
アメリカはインディアンを殺した
淡路から来た屯田兵
女性の古着に結核菌を擦りつけてアイヌの家に配った
結核 らい病 梅毒 天然痘
松前藩が本州から持ってきた
アイヌの病気だと本に書かれた

北海道には四千八百ものアイヌ語の地名
関東以北はアイヌだった
二万年前から日本にいた
先住民族として認める)(土地は返さない)

琉球は二万三千年前
当時はシベリアとアラスカが陸続きで
ベーリング海が無かった
米軍と自衛隊の基地があるので
琉球先住民族として認められない
大和朝廷の渡来人は二千年前に中国や朝鮮から来た

世界中の博物館が先住民族の遺骨を返している
日本だけが返さない
国が 学者が 遺骨を盗む
段ボールにごちゃまぜ 誰の骨かも分からない
博物館へ送るはずが ゴミ箱に棄てている
副装品は紛失したか盗まれている
裁判が行われる 返還しても謝罪はしない

広島と長崎に落とされた原爆は
米軍がインディアンを騙して掘らせたウランで作られた
アリゾナニューメキシコ
ウランを掘ったインディアンは
癌になって死んでしまった

ホピインディアン理事国のパスポートで
広島にやってきて謝罪した
「私たちが掘ったウランで作られた原爆が落とされた」
アイヌも参加しろと言われて
原発は止めよう」と訴え
九〇年にはロンドンからモスクワまで走った
ドイツでは大歓迎された

今日は知里幸恵さんの生誕祭
近文小学校の近くに住んでいて
ユーカラを残して
大正十一年、『アイヌ神謡集』という本になった
イギリスからジョン・バチラーがやってきて
ユーカラはすばらしいと言った
金田一京助博士がノートをたくさん持ってきた
世界五大叙事詩の一つである
十七歳の知里幸恵がローマ字で近い音を記録して
二年後に出版された…

講演が終わると ライトは落ちて
白い刺繍の入った紺色の民族服を脱ぎ
ジーパンとネルシャツ 帽子を被り
誰だかわからなくなって
人混みに消えていった
*

※二〇一八年六月八日、まちなかぶんか小屋(旭川市七条通七)の最前席で拝聴した川村兼一氏(川村カ子トアイヌ記念館館長)の講演「知ってほしい、近文アイヌの歴史」を想起して。

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