詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■『詩と思想』(土曜美術社出版販売)2021年7月号、 小熊秀雄特集「1968年の小熊秀雄論~高野斗志美「哄笑の構造、反世界への冀求」を読む」(柴田望)

■『詩と思想』(土曜美術社出版販売)2021年7月号、
 小熊秀雄特集の本号46〜51ページに、「1968年の小熊秀雄論~高野斗志美「哄笑の構造、反世界への冀求」を読む」(柴田望)を掲載戴いております。
 これは2019年3月17日、まちなかぶんか小屋での「第32回「しゃべり捲くれ」講座―「哄笑の構造、反世代への冀求」」でお話させて戴いた内容です。1968年、当時39歳の高野斗志美先生の評論を、ぶんか小屋でお話させて戴き、今日ここに拝受した『詩と思想』7月号に掲載戴き、全国の皆様にお読み戴ける喜びを、天国の高野先生へお伝えしたく存じます。
 1997年頃に、高野先生が研究室でマイルドセブンを片手に「哄笑の構造、この小熊論は評判が良かったんだ…」と私に笑顔で仰っていた、最初の評論集『存在の文学』(三一書房)に収録の小熊秀雄論を、柴田が解説させて戴きました。
 佐藤喜一によって引用されている「愚神群」の創刊号や、小熊秀雄詩碑建立の経緯について、思潮社の『現代詩文庫59・井上光晴詩集』に収録されている高野先生による解説文についても触れさせて戴きました。
 1968年とはどのような時代であったか…。「1967年に入ると、学生運動の火はいよいよ燃え盛り、佐藤首相外遊を阻止せんとする。学生たちは、羽田で熾烈な闘争を行った。山谷(さんや)と釜ヶ崎では、さらなる暴動が勃発した。中国の文化大革命はいよいよ激烈さを増し、アメリカでは大規模な黒人の異議申し立て運動が生じた。みずからを守る暴力は知性であると、マルコムXが宣言した。世界のいたるところで、抵抗のための暴力が露出していった。かくして世界は1968年に突入していった。1968年から半世紀を迎えた現在、わたしは破壊への情熱が渦巻いていたあの時期の文学のことを思い起こしている。詩が叫ばれ、短歌が詠まれ、小説が執筆された。誰もが難解にもかかわらず、いや、難解さゆえに評論や思想論を読み解き、喫茶店のなかで真剣な討議を重ねた。実験的であること、前衛的であること、そしてアンダーグラウンドであることが、文学と芸術の基準だった。」(筑摩選書『1968』四方田犬彦・福間建二編 2018年)
 
 「高野斗志美も言うように、「小熊の詩の領土には、剛直な楽天性が躍如としてある。」」(金子忠政「小熊秀雄の〈直接性〉についてー自虐的にー」)
 本号には、旭川文学資料館・沓澤章俊さん(フラジャイル同人、詩人・木暮純さん)による《地域からの発信ー旭川》「小熊秀雄の詩精神継承」、岡和田晃さんの詩人論「小熊秀雄研究の一世紀」、佐川亜紀さん、佐相憲一さんの対談にも、旭川旭川…、詩のマチ旭川のことが、至るところに、書かれています。旭川市民は、ここが詩文化にとってどんな街か、ぜひお読み戴きたい。私たちは伝えていきたい。

 130ページには、フラジャイル同人、二宮清隆さんの詩作品「冬の夏椿」が掲載、また、フラジャイルから1月に発行した二宮清隆さんの詩集『海へ』について、「繊細で、美しい。率直に生き、苦悩し、苦闘した人だから、このような詩を書き得たのであろう」木下裕也氏の詩集評も掲載されております。とても嬉しく、心より感謝申し上げます。

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