詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

『北海道の詩人たち2021(男性詩人編)』(阿吽塾 柴田望編 2021年7月20日)

■人は他人を否定するのが大好きな生き物です。人前で誰かを小馬鹿にしたり、SNSで中傷したりと、上から目線の総攻撃で、マイナスの空気に蔓延した世界があります。
 また、人は目の前で起きていることの意味を深く知ろうとしません。外側しか見ようとせず、覚悟が足りないので本当の理由を見落とします。この状況はなぜ起きたのか。正しいか間違っているかを超えて、もしかしたら、いまとても困っている弱い側のために、誰かが必死で起こしていることかもしれないのに、利他が前提でない思考には届きません。誰かを見下したくてたまらないからです。想像力の限界です。他人とは自分の鏡。自己肯定感が低いせいです。そして多くの人は、自分の価値観が他人と同じであろうと都合よく信じきっています。その過ちに目を逸らし、自分を正当化します。
 つまり多くの人が世界にマイナスの波動を送る。そのような絶望的な世界で、なぜ人は詩を書くのでしょうか。なぜ自分を呪いのごとく何度も何度も習慣的に苦しめるような人をも心から愛し、禍いを恩恵に転嫁させ、困難を感謝して受けとめ、作品に昇華し、マイナスを書くことで光を当ててプラスに転じ、宇宙へ愛を送ることができるのか。

 Foo Fightersの「My Hero」が、頭の中でずっと鳴っています。デイヴ・グロール が故カート・コバーンに捧げた曲です。

 私のヒーローたちが、ここに集結しています。

『北海道の詩人たち2021(男性詩人編)』(阿吽塾 柴田望編 2021年7月20日)が完成致しました。
 ご参加戴きました敬愛する詩人の皆様、編集・発行のため多大なる御指導を賜りました皆様へ心より深く御礼申し上げます。

 (表紙の絵は画家・紙田彰作、「次元のかたまり・7」〈Super‐String〉(2007年)です)
*
『北海道の詩人たち2021・男性詩人編』
(阿吽塾 柴田望編 2021年7月20日

目次

曉烏 青

 ザザー
 きみのて
 さいはて
 羽搏け!
 暴雨が来た
 白象の夢
 なごり
 魔笛
 「もう来ないでくれ」
 過不足のない?
 襲来
 悪魔は踊る
 七日間の水
 肛門の瞬き
 春雷

木暮 純

 ガラスの時間
 夜から朝へ
 流れる葦
 涙色の目薬
 悲しみの旋律

小篠真琴

 地味な男さ、バリュー株
 けいぞくする町
 くちぶえをふきながら

柴田望

 壁  ―変形譚
 壁  ―雨のシーン
 壁  ―蟲
 感謝
 顔
 顔

瀬戸正昭

 室蘭街道 1
 室蘭街道 2
 室蘭街道 3
 最後の室蘭街道

高橋秀明

 水上の家
 浸水する家族
 家
 家族
 小樽花園町夜話

原子 修

 海
 木霊(こだま)
 母
 惜別
 霊柩メトロ
 またも絶望の稲妻が
 われ神を処刑せり
 破船
 神をしばり首にしたはずの立木の枝をみよ
 鎮魂
 烏賊(いか)つけ
 落葉

堀内靖夫

 起つねえさん
 乳の国
 シー・シカリぺッの氷湖で
 棒
 空舟で
 凍夜の河畔林の一隅で

本庄英雄

 キツネ火(断崖の空)
 雪まつり
 白いシャツの少年
 春浅い東京
 別離の春
 金子光晴の顔写真f

村田 譲

 3月12日の約束
 (二人の傘のためのソネット
 鬼の祈り
 スクリーンセーバー  ――非在の貌
 日溜まり

吉田圭佑

 木彫りの龍から見た草原
 ヒラメく

若宮明彦

 羽根
 朝の潮騒
 夜の鎮魂
 岩石倶楽部
 化石倶楽部
 鉱物倶楽部
 春採太郎

*
■(短文・編集後記より)
・一篇の詩が書かれ、発表されるために、詩を書くのでも読むのでもない時間、一見詩とはまったく関係のない、会場が手配され、ステージに大道具が運ばれ、組み立てられる、キャストを揃える、衣装やメイク、スケジュールを組んで、連絡を流す、莫大な資金を集める、リハーサルに費やされる、圧倒的な待ち時間、壮絶な後片づけ…。お客さんの眼には視えない、一見芸術的ではない膨大な仕事を含めた全体的なものだと思います。

・『女性詩人編』の編集後記と、本書収録の短文にほとんど書いてしまったので、文章の苦手な私にはこれ以上何か書くことは非常に困難ですが、ただの自己肯定感の低い会社員に過ぎない私が、ある時期を境に、尊敬する詩人の先生方と実際に出会うきっかけを戴き、人生が大きく変わりました。その出会いがなければ、このアンソロジー編集に関わらせて戴くこともありませんでした。
 今回の『北海道の詩人たち』に御参加された詩人の皆様、また、実現のための励ましと詩へ向かうための力をくださった皆様へ、心より感謝を申し上げたいということしか頭にございません。
 人生のある時点で詩を書くことを決意された方々と、今世で出会えた奇蹟への歓びを表現する機会を、今回与えられたことに感謝あるのみです。(柴田)

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