詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

旭川ジャズオーケストラ(AKJO)とのコラボレーション。25周年第17回行貞悦子モダンバレエ教室発表会

■プログラム第3部の旭川ジャズオーケストラ(AKJO)のビッグバンド演奏を目当てに、25周年第17回行貞悦子モダンバレエ教室発表会へ。(AKJOは11月21日に大雪クリスタルホールで「Basie Straight Ahead」全曲演奏のリサイタルを予定しています!)
 しかし、第1部、第2部も、普段バレエを観ることの全くない私でも飽きる瞬間はどこにもなく、舞踏会、花畑、アラビアンナイトモータースポーツ、絵から美女が踊り出す美術館の創作バレエには、古畑任三郎のオマージュもあり、多彩、台詞以上に多くを語る身体表現の素晴らしさ、巧みな舞台表現で何本もの映画の中に引き込まれたような、深い恩恵の時間でした。
 第2部の終わりに、メッセージ性の強い「DIVIDING LINE~人と人とが触れ合うこと、当たり前の日常を取り戻したい…~」は「楽園」、「分断」、「明日への希望」の三部構成。キャストの衣装は白と黒の2チーム。いまの世界で起きていることすべてが凝縮されたような数分間の圧巻のパフォーマンス。永遠の雨雲に射す一筋の光。本当に素晴らしかったです。私たちは時代の変換点に立ち、変化を刷り込まれ、強制されているけれど、無限の可能性を秘める人間の想像力で困難を恩恵に変えてきた先人たちのことを思うと、本当は何も変わっていないのではないだろうか。
 その「DIVIDING LINE」が扉を開いたかのような、第3部、旭川ジャズオーケストラ(AKJO)の登場、ここで驚いたことは、人がその場で生で発する音に、共鳴して、人が踊る躍動。1部2部はデジタル録音された音楽に合わせていたけれど、人がその場で発する音の魔法に、人が魔法の舞踏で共振する化学反応の現場に居合わせたことです。電子的に演繹できないものが、均質化されない人間が表現する芸術にはある。以前、吉増剛造先生が吉田一穂の原稿について、句点が右脇ではなく真下(中央)に打たれているということに驚き、注目され、「吉田一穂の垂直性ともの凄く恐ろしいような美的なもの」と表現されていたことを想起します。感染予防のためか、ブラス隊は最前列の客席からステージに向かって吹いており、それがまた祭典のような、独特の磁場の形成。得意のスタンダード、会場に躍動が満ちる。「ララルー」、「茶色の小瓶」、「アメリカンパトロール」、「オレンジ・シャーベット」、「ス・ワンダフル」、「シング・シング・シング」。行貞悦子先生お一人のステージ「煙が目にしみる」、いままでに見たすべての美しい薄明の空がこみ上げてきて、時間が止まりました。セロニアス・モンクやマイルスの「Smoke Gets In Your Eyes」を、家で何度も聴くと思います。
 会場は公会堂でした。とにかく車が混んでいて、熊出没のために、河川敷の駐車場は使えないとのことでした。害獣として通報され、数日前、パトカーが新橋と旭橋のあたりに集まっていました。アイヌの神が人里へ下りてきたのでした。

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