詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■吉増剛造先生をお迎えした、12月12日(日)13時30分より、小熊秀雄生誕120周年を記念した旭川市中央図書館での講演「小熊秀雄への応答」、おかげ様をもちまして無事終了致しました。

■12月12日(日)13時30分より、小熊秀雄生誕120周年を記念した旭川市中央図書館での講演「小熊秀雄への応答」、おかげ様をもちまして無事終了致しました。講師に詩誌「フラジャイル」より木暮純、柴田望、そしてなんと、特別講師に吉増剛造先生をお迎えし、旭川の謎、河原館、星野由美子さん、砂澤ビッキとの出会い、イクパスイのこと、西脇順三郎ヴァレリーのこと、現代詩手帖に書かれた大島幹雄氏の「おっぴちゃんの顔」(「隅、ッ、ぺ」と詩集で何度も繰り返されるこの言葉に私は、震えてしまった。)のこと等、とても深い、素晴らしいお話を戴きました。吉増先生の朗読を拝聴し、私は完全に泣いてしまっておりました。旭川小熊秀雄賞市民実行委員会で発行された小熊秀雄の本を吉増先生に手にって御覧戴きましたことも、非常に嬉しいことでございました。
 gozo’s DOMUS 、YouTubeチャンネルの配信にご尽力された書肆吉成さんの吉成秀夫さん、コトニ社の後藤亨真さんより、本会へのメッセージを戴き、御紹介させて戴きました。
 旭川市歴史市民劇の脚本を書かれた那須敦志さん、60年代に伝説の詩誌「騒騒」を発行された詩人の金石稔さん、小熊秀雄賞市民実行委員会の橋爪会長にもご来場戴き、お言葉を戴きました。藤本哲生さんも、ありがとございます!
 来年4月発行予定の「フラジャイル」に講演録を掲載させて戴く所存でございます。
 旭川市中央図書館の西野館長様、岡本様をはじめ、旭川市の文化に関わる多くの方のご厚意とご尽力により、このような、奇跡のような会の開催が実現の運びとなりました。本当にありがとうございました。定員(ソーシャルディスタンスで30名)を超える応募があり、会場満席となりました。ご来場戴きました皆様、ご支援、ご協力を戴きました皆様へ、心より感謝申し上げます。 

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 今年は、旭川に詩碑のある、詩人・小熊秀雄の生誕120周年ということで、様々なイベントが企画されたり、出版なども行われる予定でしたが、旭川もコロナ禍のため、10月くらいまでは、こうしてお集まりになることが、難しい状況でありました。そんな中、土曜美術社出版販売の『詩と思想』の7月号には《小熊秀雄特集》が企画されました。青木由弥子さんにお声掛け戴き、私は旭川の文芸評論家・高野斗志美先生が書いた1968年の小熊秀雄論について、寄稿させて戴きました。文学資料館の沓澤章俊さんの「地域からの発信」、「小熊秀雄の詩精神継承」という題で旭川の文学について掲載されており、また、旭川北高出身の文芸評論家、詩人でゲームデザイナーの岡和田晃さんも「小熊秀雄研究の一世紀」で江原光太さんや劇団『河』の塔崎健二さんのことにも触れられた、密度の濃い論を寄稿しています。
 また、この旭川で、市民実行委員会の手作りで運営されている「小熊秀雄賞」、(今日も橋爪会長、お越し戴いており、ありがとうございます。)今年度第54回の受賞作は、冨岡悦子さんの『反暴力考』、これは札幌の出版社で、髙橋哲雄社長の響文社から発行された、稲川方人(いながわ・まさと)氏による装丁の素晴らしい詩集でした。そして、俳句のほうでもたいへん評価の高い、高岡修さんの詩集『蟻』(ジャプラン)の二作が小熊賞を受賞されました。
 さらに今年、小熊秀雄に関する大きな出来事として、今日ご来場戴いております、那須敦志さんが脚本を書かれ、多くの市民が関わり、31年ぶりの旭川歴史市民劇、旭川青春グラフィティ「ザ・ゴールデンエイジ」が見事上演されました。「フラジャイル」より、木暮純が今野大力役、私は、鈴木政輝役で出演させて戴きました。小熊秀雄の友だちですね。一応、現代の旭川の詩人が、大正・昭和の旭川の詩人を演じるという、意義のある機会ということで、那須さんにお声掛けを戴き、皆様の足手まといになりながら、大変貴重な経験をさせて戴きました。このとき、私たちは100年前にこの旭川で、文学に情熱を傾けていた若い詩人を演じたわけですが、ふと、(それは急な思いつきで、自分でも何故思いついたのかが分からないのですが、思いついてからこの考えが頭からずっと離れず、) 時間を超えて、この100年前の詩人たちに、100年後の、いまの世界の詩の最先端が、どれほど素晴らしい情況であるかを、見せてあげたいと考えましたとき、もし、本日のこの機会に、吉増剛造先生にお越し戴き、お話を戴けましたら、本当に旭川の詩の歴史に残る、大きな会、事件となり、歴史に刻まれる非常に重要な1日となりますので、ぜひどうか吉増先生にご講演戴きたく、誠に僭越なことで、大変恐縮ではございますが、お願いを申し上げた次第でございます。
 旭川の詩誌「フラジャイル」をお読みの皆様はご存じと思われますが、2018年に発行されました『火ノ刺繍』の御出版を機に、道内における吉増剛造先生の講演の内容を、「フラジャイル」2号から6号まで、掲載させて戴いております。最初に「フラジャイル」2号のほうに、2017年12月に行われましたジュンク堂書店旭川店での、吉増先生と平原一良先生の対談。このときは『火ノ刺繍』と、講談社現代新書より『我が詩的自伝 ~素手で焔をつかみとれ』が新刊発行のタイミングでした。その後、3号に、2018年5月の道立文学館、高橋純先生、工藤正廣先生とのご鼎談。4号に、同年7月の北見市、喫茶コバルトでの金石稔さん、帷子耀さんにもお話戴いた詩の夕べ。5号は、同年10月の吉田一穂をめぐって、酒井忠康先生とのご対談。6号の私立小樽文学館でのイベントも10月でした。吉増先生と当時の、玉川薫館長とのご対談で、滝口修造のこと、そして、木ノ内洋二さん、イクパスイのこと等、とても深いお話を拝聴させて戴きました。この旭川という北の果ての、小さな同人詩誌に、何度も吉増先生の貴重なお話を収録させて戴き、普通では考えられないことです。この2号から6号、宝物です。本当にありがとうございます。
 昨年4月より、吉増先生は書肆吉成の吉成秀夫さん、コトニ社の後藤亨真さんのご尽力によりgozo’s DOMUS 、YouTubeチャンネルを立ち上げられ、毎週木曜「葉書Cine」「SmokyDiary」を配信、先月11月18日まで合計82回、毎週配信を続けられました。
 昨年9月発行の「フラジャイル」9号に「葉書Cine」のこと、吉成さん、後藤さんにもご寄稿戴き、特集的に掲載させて戴きました。
 こうした、「フラジャイル」にお付き合い戴いていた間にも、吉増先生のご活動は多岐に渡り、非常にお忙しく展開されています。美術館での展覧会(「涯テノ詩聲 詩人 吉増剛造展」)、そして井上春生監督の映画『幻を視るひと』の上映、数々の賞を受賞されています。そして、Re-born Art Festivalの「詩人の家」、足利市のartspace&caféでの展示やパフォーマンス。今年3月、佐野元春氏とのご対談、NHK放送の番組に深い感銘を受けました。現代詩の最先端、最前線の、こんなにたくさんのお仕事をされていて、吉増先生のファンの方たち、私もその一人ですが、先生のご活動は、追いかけても全然追いつけない、それほどの速さと拡がりということにも、いつも非常に圧倒されております。SmokyDiary 、DOMUS のYouTube配信が終了されたタイミングで、講談社現代新書『詩とは何か』そして、最後の御詩集と仰られている『Voix』が発行されました。すると、読者としてはもう、いてもたってもいられない気持ちになってしまうわけです。そのいてもたってもいられない気持ちを、どう言い表したらいいのか、考えておりましたところ、先週、帷子耀.さんより、この『機関精神史』第四号という、素晴らしい雑誌をお送り戴きました。今日この会場にも来て戴いております、金石稔さんと詩誌「騒騒」で活動を共にされた、伝説的な詩人の帷子耀.さんの最新作が冒頭にあり、「ヨモダ全方位」という、四方田犬彦さんの長いインタビューが収録されています。この中に、60年代のことについてお話されている、四方田犬彦さんの言葉を紹介させて戴きます。
 「それから68年から72年くらいには、帷子さんもそうだけど、吉増剛造っていう、当時はまだ新人がいてね。エクスクラメーション・マークが詩にばんばん出てきた。今の現代詩にはビックリゲーションが出てこないんですよね。あの頃はみんなハイになっていたし、それから、『現代詩手帖』とか、『長帽子』とか、『凶区』とかが紀伊国屋書店の同人誌コーナーに置いてあると、ドーナツ盤のレコードを買うような感じでみんな買っていましたね。今は現代詩っていうと現代詩を書いている人しか読まない。現代詩を書いている人が評論するというジャンルになりつつあって、それは非常にデカダンスだと思うんだけど、あの頃は時代に遅れちゃいけない、吉増剛造緑魔子(みどり・まこ)について詩を書いたぞっていったら、すぐに本屋に行って買ってくるという感じでした。だから現代詩が好きだとかそういう人じゃなくて、要するに黛ジュンがドーナツ盤出したぞとか、小川知子とか、ビートルズとかそういう感じで、『現代詩手帖』や同人雑誌を買うという時代でしたね。」という、もうきらきらとした、時代の輝きを感じるような素晴らしいお話ですね。昔とは違って現代詩は詩を書く人だけのジャンルになりつつあるということですが、今でも、吉増先生の作品や本を読まれる方は、ジャンルを超えた、別格なある意味、芸術的な事件として、先ほど書かれていたような、いてもたってもいられないような気持ちで、楽しみにされている方が多いのではないでしょうか。『現代詩手帖』の最新号にも、多くの方が『Voix』のことを、今年の詩の世界のハイライトとして、詩集評や対談の中で、高く評価され、感激を語られています。詩誌評に、奥間埜乃さんがフラジャイルを、とりあげて戴いておりますが、前号に掲載のインタビューで、阿部嘉昭さんが、吉増先生の作品について、「語りが事象の連想で、どんどんどんどん連鎖増殖していく」と嬉しそうに語っておられたこと、紹介戴いております。そんな風に多くの方が心をきらきらさせて、真剣に詩を読み、詩の奥底に耳を傾ける、文学や美術や音楽といった、多くの人がそうした芸術の芯というか核の部分に恐る恐る真剣に触れて、心を輝かせていく、ビートルズのおっかけみたいに吉増先生の作品に魂を揺さぶられる、そんな心の動きや、文化の在り方が、社会にとって本当に大切ではないかと改めて考えさせられています。
 小熊秀雄の時代の人たちにとっての詩や文学も、まさにそういう、最新のカルチャーであって、詩人や作家はYouTuberやインフルエンサーで(吉増先生は実際にYouTube配信もされていますが)、同人誌はSNSのようなものだったのかなと思いますが、今日も旭川市の文化に関わる沢山の方たちのご尽力によって、この会を実現させて戴くことができました。本当にありがとうございます。多くの方の瞳がきらきらと輝くような、文化の盛り上がりを、微力ながら目指して参りたいと考えております。
 やはり、吉増先生が講談社現代新書で、ディラン・トマスやエミリー・ディッキンソンのことを書かれている!と聞くともういてもたってもいられなくなる。あの『現代詩手帖』に連載されていた、石巻に全身全霊を傾けられた詩集の「Voix」がついに出た! フランス語で金華山に呼び掛けているらしいぞ!と聞いたら、大変だ! と、書店に走ったり、この図書館の会場に足を運ぶ方たちが、私以外にも、この旭川にも大勢、いらっしゃいますことを、本日も定員を超えてのご応募がありましたこと、ご報告申し上げます。(柴田)

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