詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■柴田三吉さんの新詩集『ティダのしおり』(2022年3月26日 ジャンクション・ハーベスト)

■柴田三吉さんより、新詩集『ティダのしおり』(2022年3月26日 ジャンクション・ハーベスト)をお送り戴きました。誠にありがとうございます。沖縄詩集。ティダとは太陽の意味。「一歩あるくたび/一日あるくたび」、「風景が変わるたび/人に出会うたび」…旅人がわき腹に挟む、熟れた舌のように熱をもつ「ティダ(太陽)のしおり」。残酷な歴史に向き合うたび足を止め、「旅人は書物のようにふくらみ/深夜 それを捲り返す」。
 6部構成の「辺野古」のイメージが壮大で、圧巻でした。「腕のいい大工が/カンナで削り出したような波」の「しゅるしゅる」という潮の息吹が紐解く、時間が止まるほどの美しい海の風景。「人のものでないものが/人のものであったかのように/売り渡されたとき/奪いとられたとき」「うかつにもきみたちは/(まったくうかつにも)/風景を殺すことができると信じている」という訴えが波紋の様に広がり、「空も海も陸もひとつながり/ひとつのいきもの」…太陽の源へ届く。
 第52回小熊秀雄賞を受賞された詩集『旅の文法』より、「沖縄」「カチャーシー」も収録。「大根だかゴボウだか」「棘」も長編詩「辺野古」に織り込まれている。瀬長亀次郎のドキュメンタリー映画(『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』)を想起しつつ、拝読させて戴きました。心より感謝申し上げます。

f:id:loureeds:20220218124352j:image