詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■石毛拓郎氏の個人誌「飛脚」(2022年1月7日  編集・発行:石毛拓郎氏)

■1979(昭和54)年に詩集『笑いと身体』(詩辞詩宴社)で第12回小熊秀雄賞を受賞された石毛拓郎氏の本を、旭川文学資料館で拝見したことはありましたが…今回初めて、個人誌「飛脚」(2022年1月7日  編集・発行:石毛拓郎氏)を拝読させて戴きました。「食卓から生の五感、直という五感にまつわる身体の所作が、消え去ろうとしている…」、エッセイ「熟柿と器」を首肯しつつ拝読。一昨日はマクドナルド、昨日はコンビニのおにぎり、今日はレトルトのパスタを解凍しておりますから(笑)…「「盛る器」と「盛られる食材」の相互扶助の関係が毀れて、日々の食器にのぼる彼らは、瀕死の情景を晒しているばかりである。」「本来の「旨さ」にありつきたい人々の渇望は、鈍化の一途をたどっていよう。」…そして令和4年にパソコンで編まれた個人誌に新日本文学会花田清輝森崎和江の『からゆきさん』について書かれている驚き!「人をのろわば穴ふたつ…」の念仏の教えのごとく、現代から消えていく熟柿の食感。
 収録されている葉山美玖さんの詩篇「空母艦」も消えていく自然の感覚、空母艦のような新築マンションが建設され、朝焼けのむらさき色や、金星の燦き、熟れた太陽、「みかんの腐ったような/くらい夕焼け」の空から人を遮る。石毛氏のエッセイに戻ると、花田清輝の言葉〈はなはだ素朴な歌の文句は、つねにおそるべき革命の到来を予告する〉が引用されており、テーゼとしての「食感」や、多彩な「空」に触れる全身の感覚により、かつて激化させることのできた想像力が奪われる。「痼疾感」が静かに立ち上ってくるようです。
 石毛拓郎氏の詩篇、本庄又一郎氏に捧げられた「朱も丹も」、「思ひで」などで有名なミュージシャン、故・鈴木常吉氏に捧げられたパレスチナについての「天然の水」(鈴木常吉氏が生前ライブハウスなどで歌っていたとのこと)も興味深く拝読させて戴きました。心より感謝申し上げます。

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