詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■ 『生きる場の思想と詩の日々』(著者:花崎皋平 藤田印刷エクセレントブックス)

■新刊『生きる場の思想と詩の日々』(著者:花崎皋平 藤田印刷エクセレントブックス)は620ページもの大著です! 第1章「青春前期の悩みと彷徨」第2章「嵐と大波に呑み込まれた時代」を「逍遥通信」第5号で拝読させて戴き、昨年5月、旭川の詩誌「フラジャイル」第11号に、「二〇〇七年から」、この御本の第14章「沖縄の島々を歩く、そしてアイヌの遠山サキの傘寿」の540ページ以降から「ネルーダの国チリ マチュピチュとナスカ」、「ロングウォーク ピリカ・ケトウム・アプカシ」、「田中正造の足跡を追って」、思想家森崎和江のコレクション『回帰』解説についても掲載させて戴いたことは本当に光栄なことでした。
 
 「全国の大学で学園闘争が繰り広げられ、北海道大学でも学園を封鎖して大学のあり方を問う運動が起こった。最後は警察機動隊による封鎖解除で幕が降ろされたが、それに抗議して大学本部に立てこもった学生が逮捕、起訴された。筆者はその裁判の特別弁護人を引き受け、有罪判決を機に大学をやめた。
 それ以後、市井の一私人として暮らしながら、平和運動、社会運動に従事しつつ、詩作と思想を養う活動を続けて今日に至っている。」(「あとがき」より)
  
 戦後から現代、壮絶な時代を生きる「市井の一私人」の手記が、大きな力の都合によって改竄されることなく、そのまま次世代へ届けられることの重要さを思いつつ、どのページから読んでも惹き込まれますが、社会のあり方や根本的な仕組みと人間として向き合う姿勢、問い続けることの大切さを教えられるように感じます。
 あたかも航空写真のような膨大な情報量、読み進めるうちに付箋も膨大になってしまい、私などは読んだことのない書物や難しい哲学についても花崎さんの視点から豊かに語られており、興味が尽きません。例えば現代詩について「本来詩が持つべき「歌う」という面が欠けている。戦争中に民衆の中にしみこんで、灯となり生き続けるということがなかった。うたが軽視されていた。」「これは今に続いている弱さである。」(1955年)というような考察の記述や、1976年、学ぶことが多かった本としてカルロス・カスタネダの 『呪師に成る イクストランへの旅』( 真崎義博訳)より「狩人であることが、人間の最高の生き方である。狩人であると、世界を色々違った仕方で見ることができる。風のドラマをみとる力、風に隠れている力を使うこと…」など、各書物から引用されている箇所も興味深く拝読、世界を色々違った仕方で見る力を放棄してはならないと感じつつ、勉強させて戴いております。何度も読ませて戴きます。

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