詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■新・日本現代詩文庫157『佐川亜紀詩集』(土曜美術社出版販売)

■新・日本現代詩文庫157『佐川亜紀詩集』(土曜美術社出版販売)を大切に拝読させて戴いております。
 
 プーチンがドンバス出身の少女の詩を讃えてプロパガンダに利用するこの世界に、劣化ウランを浴びたイラクの少女の「《ヒロシマの眼で世界を見て》」(「ヒロシマの眼」)という囁きを響かせる佐川亜紀さんの詩がある。

 プーチンがロシア兵の戦死者数をごまかそうとしているこの世界に、「一九四六年に公布された日本国憲法に/アジアの二千万人の死者が/日本の三百万人の死者が/沖縄の二十万人の死者が/ヒロシマナガサキの二十一万人の死者が/死者たちが文字の裏に張り付いている」(「聖なる泥/聖なる火」)と告発する佐川亜紀さんの詩がある。
 
 プーチンが「電撃的な対抗措置を取る」「ロシアは他国にない兵器を保有している。必要なら使う」と核兵器の使用をちらつかせて西側を脅すこの世界に、「すべてが焼け 底が抜けた青空に見たものは何だったのか」(「わたしはわたしの歌をうたう」)と問う佐川亜紀さんの詩がある。

 「詩人はいつも低いところを指向し、苦しみ傷つけられる者たちの隣人になることを願う。詩と芸術が貧困や苦しみをなくすことはできないかも知れないが、慰めることはできるからである。苦しむ者、悲しむ者に、人間の言語は非常に限られた役割しかできない時が多い。それで、むしろ黙って静かにそばにいてやること、手を取って言葉なしに一緒に涙を流してやることが、もっとも適切な慰めであるという話もある。しかし、詩人の慰めは口先だけの言葉ではなく、単なる憐憫以上のものであるし、まことに内面から共感し同感して同行する言葉なので、偉大な力を発揮することができる。佐川詩人は、世界(世)に向けて広く受容される詩的発信を持続してきているし、これからも引き続きやるべき理由が、ここにあるだろう」(解説:権宅明(詩人)「歴史を洞察する究極的な希望の送信者」より)

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