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■第55回小熊秀雄賞贈呈式
受賞作 津川エリコさん 『雨の合間』(デザインエッグ)
※アイルランド・ダブリンよりオンライン参加
日時 2022年5月14日(土)午後3時から
会場 アートホテル旭川(旭川市7条通6丁目)
記念講演 平山秀朋さん(小樽在住)
演題 『小熊秀雄をめぐる文学的営為~旭川、椎名町、小樽~』
HBC社員だった平山さんの父親の遺品の中から、小熊の妻・つね子の肉声テープが見つかった。つね子が語る、夫・小熊秀雄の実像とは…。
参加費 500円(会員外700円)
■贈呈式の後、コロナ対策をしっかり取って懇親会を開きます。軽いアルコールと軽食を用意します。参加費は2500円。ぜひ、ご参加ください。
※新型コロナウイルス感染防止のため、発熱等体調がすぐれない時にはご参加をお控えください。ご参加される場合は、必ずマスクをご着用ください。(小熊秀雄賞市民実行委員会ブログより)
■『雨の合間』、「雨」とは何か。詩は読む人によって、読む時代や場所によっても、言葉の意味や彩りが変わります。
いま、世界ではあらゆる言語による、戦争に勝つことを目的とした兵器としての、さまざまな言語による情報の「雨」が、絶え間なく、ウクライナでは砲弾、ミサイルの「雨」が人々を、街を、襲っています。その「雨」がいっとき止んで、太陽が差す「合間」には、一体何が起こるのでしょうか。
「ナメクジとカタツムリもお使いに行こうと」 「雨の合間を待っていて濡れそぼった/繁みから這い出てきた…」こう書いてますよね。 雨が止むのを、じっと待っていた小さな命が「濡れそぼった繁みから這い出てくる」。土の中から芽が出てくるような小さな命が動き出す。雨の合間の沈黙は決して無音ではなく、そんな微かな命の、希望の音に、耳を傾けるときです。
小さな命が草むらから道路に出て、自転車に踏みつぶされ、「黒いダリアの押し花みたい」に「微かなスジの細部」をあらわす。小さな死が美しく表現されています。雨の合間の沈黙のときは、死を見つめるときでもあります。
詩の想像力が、時間を止めて、『雨の合間』の沈黙の中で、死んでいった人たちの声に耳を傾ける。いま、多くの方が戦争で亡くなっています。そして新聞やテレビで報道される大きな声だけではなく、その陰で小さな虫の死のように、公の場では注目されない、幽かな声、微かな命の動きに届く。この詩集に収められている、「ページをめくる人」、「こんなにも濃い青」、「十月の風」など、他にも忘れられない作品がたくさんありますが、まさにそうした「沈黙に耳を傾ける」、人類の辛い時代に、文学の無限の想像力をもって向き合い、詩の力が、希望へ導いてくれる作品として鑑賞致しました。
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今夜もまた眠られずにいる者の目を覚まさせ続け
嘆きの歌で動揺させ何度も寝返りを打たせよう
冷たい星を闇の中でさらに光らせ
落ちて来る光を夜明けまでに貪り食らおう
私の母は誰なのかとは訊かないで
彼女はただもう冬の匂いに過ぎないのだから
かつてないこの夜をむしろ眠らずにいたい
闇を抱えて冷たい石を飛び越えながら
岸辺に沿って次から次へ
鉄色の水にさざ波たてて
(「十月の風」『雨の合間』)