詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■三宅鞠詠さんの詩集『夢*とりかへばや』

■三宅鞠詠さんの詩集『夢*とりかへばや』を拝読させて戴きました。ご恵贈賜り、誠にありがとうございます。とても謎深い魅力的な詩集で、ミステリ小説のように何度も惹き込まれたのですが、読者として謎のままにしておきたい深みに何度も足をとられ、そこが環状の神話的空間への入口のように感じられます。出生の秘密、罪の有無、本当と嘘、フィクションとノンフィクションが幾層にも織り合わされた芸術。幼い頃祖父母の家で、大人たちが、会ったこともないたくさんの親戚の名前たちを浮かび上がらせ(今聞いても多分私にはわからない)、多層な人生の物語を織り合わせるのを夜聴きながら、たくさんの夢を見た記憶が蘇りました。嘘の人生、戸籍上の死のイメージが後半、作為的な詐欺や殺しといったリアルな恐怖の色を帯びていく、ストーリーの断面に導かれました。詐欺師たちの夢に「カフカ」が登場。「変身」の芋虫と人間、胡蝶の夢の蝶と人間……、「とりかへばや物語」はもしかしたら変形譚の一種かもしれないと考えました。貴重な勉強の機会を賜り、心より感謝申し上げます。