詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■渡ひろこさんの詩集『柔らかい檻』(竹林館)

■渡ひろこさんの詩集『柔らかい檻』(竹林館)を拝読させて戴いております。ご恵贈賜り、心より感謝申し上げます。
「黄泉の国とは煙で繫がっているのよ」という一行が印象的な詩篇「迎え火」。お盆に故人が家に戻ってくるとき「家はここですよ」と目印として焚く…新海誠監督の映画『天気の子』に迎え火をまたぐシーンがありました。黄泉の国との繫がり、人類が直面した堅牢な檻の情況である過去との繫がり。定めや隔たりが薄くなる地点を編みだし、過去の大切な記憶やかけがえのない人との関りを、8月15日に発行されたこの詩集に収められた一篇一篇が現代に顕現させ、気づきを与えてくれるようです。
 マコウスキーの絵画「ルサルカ」を幻視させる詩篇「謝肉祭」の中にある「懺悔の前に知っておくがいい/予言者の言葉を信じてはいけない/告知は形だけの体裁に過ぎないから/此処には加害者も被害者もいない/抗えない時点ですでに共犯者なのだ」という聯が印象深く、檻が音もなく迫ってくるような、今の世界への警鐘のように感じました。

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