詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■本日11月16日(水)、旭川ケーブルテレビ「ポテトにこんにちは」に出演。詩誌「フラジャイル」について、旭川の文学、イベント(8月俊カフェさんで開催のコトバスラムジャパン北海道大会、岡和田晃さんトーク&朗読、11月谷口雅彦さんの展覧会『CHRONICLE1977-2022』、12月24日詩誌「フラジャイル」創刊5周年記念イベント)について等

■本日11月16日(水)、旭川ケーブルテレビ「ポテトにこんにちは」に30分ほど出演をさせて戴きました。

 詩誌「フラジャイル」について、旭川の文学、イベント(8月俊カフェさんで開催のコトバスラムジャパン北海道大会、岡和田晃さんトーク&朗読、11月谷口雅彦さんの展覧会『CHRONICLE1977-2022』、12月24日詩誌「フラジャイル」創刊5周年記念イベント)について等、お話させて戴きました。

 とても素敵な…ラヴァスト(RAVVast)奏者の谷口紗代さんがパーソナリティで、大変緊張致しましたが、創作について等、アーティストの感性からのご質問を戴き、とても楽しく、貴重な勉強をさせて戴きました。詩の朗読を求められ、びっくりしましたが何とか読めました、、誠にありがとうございました。旭川ケーブルテレビ11ch、10chでも何度か再放送されるようです。
 
 下記が台本のために用意したメモですが、大体すべてお話させて戴きました。

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1 ■旭川の文学・文学者について

小熊秀雄:昭和の初期に素晴らしい詩を書いて、東京で池袋モンパルナスの画家たちと交流した詩人。それ以前に旭川で新聞記者をしていた。旭川の文化の中心人物の一人。小熊秀雄やその親友たち、今野大力や鈴木政輝、詩人たちの存在が、旭川を最も古い詩の街にした昨年上演された旭川歴史市民劇、ザ・ゴールデンエイジに登場。私も詩人・木暮純さんも出演。
 小熊の詩を読めば、昭和の戦争へ向かっていく時代に、外国人の方や先住民族の方たちといった、当時の弱い立場の人たちの味方だったことがわかります。今、SDGsで「誰一人とり残さない」「多様性」ということが盛んに言われているが、小熊秀雄は80~90年前からSDGs。かなり時代の先を行っていた。
 私も運営委員(1次選考委員)をさせて戴いております小熊秀雄賞は全国規模の詩の賞。旭川の市民実行委員会が運営。毎年、全国からたくさんの詩集が寄せられていることからも、小熊秀雄の偉大さが分かります。

・富田正一:小熊秀雄の親友の小池栄寿という詩人から詩を習った富田正一さんは19歳から91歳まで、なんと72年間、詩の雑誌「青芽」を発行。1946年から…全国のどの詩の団体よりも歴史が長い、名寄・旭川の「青芽」は全国5000人以上の詩人が関わった。「青芽」の後継誌が私たちの「フラジャイル」。富田さんはいつも「旭川こそ北海道の詩の原点」と言っていた。

安部公房は世界的に有名な小説家(ノーベル文学賞候補)ですが、初めて出した本は『無名詩集』という詩集でした。詩からスタート。東京で生まれて満州で育ったが、原籍地は、東鷹栖。東鷹栖の近文第一小学校に記念碑があり、東鷹栖支所に資料の展示があります。森田庄一さんが呼び掛けて結成された東鷹栖安部公房の会。柴田が事務局を務めております。再来年が生誕100年なので、ぜひ何かイベントを企画したい。
     
高野斗志美:日本で一番最初に安部公房の評論の本を出した、安部公房評論の第一人者が、旭川高野斗志美先生です。全国的に著名な文芸評論家。三浦綾子記念文学館の初代館長。今年は高野先生の没後20年です。「グラフ旭川」の12月号の文芸欄に高野先生について寄稿させて戴きました。高野先生から言語や哲学について学びました。「旭川は都市の原形質」という、都会と農村の両方がある街だということを高野先生は書いていた。人間が形成する社会がどうあるべきか、いつも考えていた哲学者の高野先生らしい言葉。「旭川でしかできない仕事をしなさい」と小説家・井上光晴に高野先生は言われた。井上光晴は、娘さんの井上荒野さん原作の、映画『あちらにいる鬼』(寺島しのぶ主演)が今月公開、豊川悦司が演じている小説家が井上光晴井上光晴旭川に何度も来ていて、文学伝習所を開いている。

旭川ゆかりの素晴らしい文学者はまだまだたくさんいます。9月に、宗教学者で詩人の鎌田東二先生が京都から来られて、三浦綾子記念文学館旭川文学資料館をご案内しました。旭川の文学の土壌について、鎌田先生にご興味をお持ち戴き、感心されていたのが嬉しかった。

2 ■思想と文学について

・自分が生きている時代とどう関わり、何を表現していくかということは、すべての創作者に与えられた課題。フランスの哲学者サルトルが、「アンガージュマン」という言葉で、人間の社会参加について書いて、今の状態から自分を解放し、過去を乗り越えていくことの大切さを語った。
・直接的な表現で、思想や政治について作品で書くかどうかにかかわらず、何かを表現するという行為を選んだ時点で、受け手を想定している。社会と関わっている。

・表現の仕方について、例えば政治的な問題等、ネット上で、SNSで人を叩くとか、誹謗中傷したり炎上するようなやり方もあるのかもしれませんが、一人の創作者がじっくり考えて、詩や小説や、絵画や、音楽や映画といった芸術作品の中にメッセージをこめていく、社会をよくしていきたいという願いをこめて表現をしていくことが大切なのは当然のことと思っています。

・昨年12月、旭川市中央図書館の講演会(小熊秀雄生誕120年記念)に特別出演戴いた、日本を代表する詩人・吉増剛造先生は、ある講演の中で、現代詩の創作について「未完成の極みへ向かっていく」ようなものと仰っていました。完成された言葉として成立する以前の言葉、言葉にならないものを言葉で表現するのが詩なのではないかと思ってます。

安部公房は、詩について「世界の中に自分がある」という状態と「自分の中に世界がある」という二つの感性の状態を、もの凄いスピードで行き来するのが詩人の役目・運命だと書いている。言葉になるものとならないものの両方を問題にしている。難しくて分からない、というような詩に出会うときこそ、新しい世界との出会いがある。別な世界へ連れて行ってくれる。

・昨年「フラジャイル」でインタビューを行った際に、詩人の阿部嘉昭先生に言われましたが、書く人と読む人は違う。読む人によって無限の読み方がある。書く人もそうですが、読む人も、今までどんなものを読んできたかとか、どんな経験を積んできたかによって、読み方が変わってくる。
 たった一人が孤独に書くだけではなくて、書き手と読み手が双方向から作っていく。ある意味で会社の仕事と同じであって、自己満足でやっていてもだめで、良い仕事かどうかを評価するのはお客様とか、自分以外の周囲の人たち。
・自分がこう伝えたいということと、読み手がどう感じるかは違う。時代によっても変わる。何十年経っても古くない、面白い普遍的な作品に出会えることも面白い。
 

3 ■若い世代の詩の活動について

Twitterで詩を書いている若い世代の詩人が多いこと…2014年に宮尾節子さんがTwitterで発表された詩篇「明日戦争がはじまる」の社会的な影響が大きい。詩の雑誌や団体よりもSNSTwitter、インスタグラム)のほうが若い詩人に出会える機会が多い。読み手の反応が早いという点では、創作に向いているのかもしれない。

・コトバスラムジャパンの情報も主にTwitterから発信されている(2020年に三木悠莉さん、Jordan A.Y. Smithさんによって発足された朗読パフォーマンスの大会)。全国各地で予選大会を行い、その後、全国大会、パリのワールドカップへの進む、世界規模の大会。昨年と今年は、コトバスラムジャパン北海道大会に詩誌「フラジャイル」主催ということで関わらせて戴きました。

・札幌に俊カフェさんという、詩人・谷川俊太郎氏公認のすばらしいカフェが狸小路7丁目の1本南側の通りにあるのですが、今年のコトバスラムジャパン北海道大会は俊カフェさんで8月14日に開催。三木悠莉さん、DJ K.T.R.さんも来てくれて、詩人の町田すみさんや、オーナーの古川奈央さんに多大なご協力を戴き、フルエントリー12名の詩人たちが現地対面とZoomオンラインのハイブリットで、パフォーマンスを行いました。優勝がHaruka Tunnelさん。準優勝が岡和田晃さん。

YouTubeで配信されており、アーカイブを閲覧できます。ここに参加しているのは20代から40代くらいの若い詩人たちでした。私は普段は60~80代の詩人の方たちと関わることのほうが多いので、刺激的な経験でした。若い世代の詩人たちも、一人一人真剣に、言葉の芸術に取り組んでいる。

4 ■イベントについて

・8月26日に「旭川はれて」の日本茶CAFE 和風居酒屋 WHIZさんで、文芸評論家の岡和田晃さんのトークと朗読のイベントを行いました。 岡和田さんは旭川北高の卒業生で、文学関係者であれば全国の誰もが名前を知っており、第一線で活躍。気鋭の文芸評論家です。「図書新聞」の時評を担当されています。詩人としても有名。「フラジャイル」に「現代北海道文学研究」を連載。旭川にゆかりのある、岡和田さんが活躍していることも、もっと旭川の人に知って戴きたい。

・フィール5階のジュンク堂書店旭川店ギャラリー・ジュンクで、明日17日から、写真家・谷口雅彦さんの展覧会、谷口雅彦写真展『CHRONICLE1977-2022』が開催。谷口雅彦さんより「フラジャイル」に表紙のお写真をご提供戴いております。令和4年度の旭川市文化奨励賞を受賞されました。(僭越ながら推薦をさせて戴きました。)谷口雅彦さんの写真の世界への貢献、全国のみならず、世界的な活動を、旭川の多くの人に知って戴きたい。

・12月24日には、同会場ギャラリー・ジュンクにてトークと朗読のイベントを行います。旭川市教育委員会の後援も戴きました。旭川東校出身の詩人・吉田圭佑さんの写真を大きくポスターに入れております。吉田さんは2017年、東高2年生のとき、有島青少年文芸賞最優秀賞を詩で受賞した詩人です。現在、詩誌「フラジャイル」で活動。新世代の吉田さんの視点からの詩について語って戴きたい。 
 

5 ■詩集『4分33秒』について

ジョン・ケージ実験音楽、「4分33秒」の楽譜に沿って詩で沈黙を表現しよう試みた詩集です。昭和の時代の北海道の詩人(鈴木政輝・加藤愛夫)について、彼らが戦争の時代に、どのような表現の極みを目指し、何を書き、何を書かないことで、その沈黙を浮き彫りにしたか。それは、時代に強いられて、無理やり沈黙させられたのではなく、詩人が意図して作曲した「楽譜の指示」のような沈黙だったのではないか…、現代に生きる私たちも、意図された沈黙と意図せぬ沈黙が複雑に織り濁ぜられた状況下で、本質的な思考へ届く言葉を奪われている。自ら沈黙を創りだすことで「恢復」する道があるのではないか…。
・「心の恢復」…、今日も谷口さんのラヴァストの演奏を動画で聴いて、心を恢復できた。良い音楽ほど沈黙を感じさせる、沈黙を奏でる、と考えています。

詩篇「スプーン」の朗読

6 ■視聴者へメッセージ

・私たち「フラジャイル」の前身の『青芽』主宰の富田正一さんは、戦争のとき、特攻隊を見送る通信兵・少年兵でした。戦争が終わって帰ってきて、「これからは心の時代だ!」「心のよりどころを作ろう!」という思いで詩の活動を始めました。 
 「これからは心の時代だ!」…それは富田さん一人の声であると同時に、その時代の多くの人たちの想い・声でもあった。だから1950年代、60年代の戦後文学は、社会全体に影響を与えるような大きな動きであったのだと思います。旭川もそうだった。そうした時代のことを私たちはもっと学んで、次の世代へ伝えていく、そうすることで今の時代における生き方を探していく。そのために活動し続けていかなければならないと思っています。

・2017年12月にまちなかぶんか小屋で創刊イベントを行ってから、詩誌「フラジャイル」の活動は5年になります。その間、多くの市民の皆様より厚き応援を戴き、ここまで来ることができました。心より感謝申し上げます。

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